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「おめでとうございます、レイカーリス・アレン様」
「殿下、おめでとうございます」
 数々の祝詞が飛び交う。
 今日は僕の……ローレシア王国王太子にして王位継承者、レイカーリス・アレン・ローレシアの第16回目生誕式だ。
 僕は真名で呼ばれることに少しの居心地の悪さを感じながら、手にシャンパンを持ち式典の参加者に挨拶をして回る。
「ありがとうございます。これからも何とぞご指南ください」

 大勢に挨拶してまわってから、やれやれと息を洩らして会場の隅に身を寄せた。
 毎年のことだがなんとも息が詰まる思いだ。
 壁にもたれてシャンパンを一気に煽ると、そばを通った給仕にグラスを手渡して改めて会場を見まわす。

 城の大広間。
 この場にいるほとんどが、僕の誕生日そのものを祝いに来たのではなく政治上の付き合いでやってきたのだろう。
 自分のためにこの場に居る者は一人も居ない。
 つまらない、と思った。
 自分とて、対人関係を温めてきたわけではないのでその事実について不服を申し立てるつもりはなかった。
 だが、それと自身が直接感じてしまう感情とは別物である。

 そんなことをぼんやりと考えながら壁にもたれたままでいると、近寄ってきた人物に声をかけられた。
「つまらなさそうだねアーリル」
 顔を向けると、そこには僕と面立ちの良く似た少年が立っていた。
 それが親しき仲の少年だとわかり僕は頬をわずかに緩ませる。
 ……が。

 母を除いた身内が呼ぶこの愛称を僕は嫌いだった。
 自分がローレシアの王子であるということを実感させられるからだ。
 いや、王子であることというよりも、王子であるべきなのにそうではない、ということを実感するといった方が正しいかも知れない。
 それゆえのむず痒さ。

「ティールか、……まあな。大人達が適当に会話して騒いでいるだけで、僕の誕生日なんて口実に過ぎないしさ。誰か一人でも僕のために来てくれたってなら、その人のために楽しそうな顔してもいいけれど」
「私は少なくともアーリルの為に来たつもりだけどなぁ」
 相手の様子にくつくつと笑うと、僕がティールと呼んだその少年は僕の肩を軽く叩く。
「難だったらここを抜けて、剣の相手でもしてくれないかい? 実を言うと私も少し退屈していたんだ」
 それを聞いて僕は、ふ、と笑みを漏らした。
「OK。お相手つかまつる」

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□モドル□


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