太陽の光が顔に当たり、僕は目を覚ます。
 夜露が身体に付いてしまっているのを払うと起き上がって伸びをした。

 まずどこを目指すべきか考えた結果、大陸と大陸を繋ぐ祠……ローラの門へとやってきたのだ。
 道中魔物には出会ったが、大して強い者はおらずすべて剣で薙ぎ払ってきた。
 だが。
 そこの門の守に言われた言葉。

「ローラント王よりのご命令です。アシュカイナ・アレフ王子と共に居なければ、ここを通してはならないとのことです」
 なるほど、ニフルを振り切って一人で出たのが裏目に出たか。
 僕が着くより早く鳩でも飛ばして、ここを通さないように伝令を出したに違いなかった。
 信用がないのか単に心配しているだけなのか……。
 例の噂のことも相まって、どうにも父が自分に対して過保護なところがあると感じていた。

 ともあれ、どうあっても通してくれそうにない。
 力づくで通ることも出来るが……その前に勇者の泉に立ち寄るべきだろうか、とも考えた。
 そこで夜を徹して泉の方角へ向かって歩いてきたのだが、月が大分西に傾いた辺りで限界を感じ、ここで野宿することにした。

 集めた小枝で焚き火を起こす。
 持っていた硬めのパンを口にして水を飲むと、あまり体力を消耗しないように。
 そして明日も日の出とともに行動するために、とそのまま荷物袋を枕にし、横になって眠った。

 夜はいささか気温が低かった。
 薄手の毛布くらいは持ち物に加えておくべきだったろうかと考えつつも目を覚ますついでに身体に付いた土や枯れ草、枯れ葉などを払う。
 今日も一日歩いてさっさと勇者の泉に行ってしまおう。
 それから、さっさとアシュカイナ王子とやらを見つけてムーンブルク地方へ渡ろう。

 頭の中でスケジュールを整えながら朝の食事をすませると、僕は荷物を手にして立ちあがった。
 と。
 スライムが一匹、前方にいるのが見える。
 あれに気づかれないようにこっそりとここを立ち去るか、敢えて倒しに向かうか。

 魔物達は自分が殺した人間から、金品を奪うのを常としていた。
 それを何に使うのかはまだ知れていない。
 単に光るものが好きなのか、それともハーゴンに上納するためか。
 人肉を食らう種である場合は喰らってから金品を奪うようであるが……。
 つまり、金品をたくさん持っていればいるほどその魔物は人を殺しているということだ。

 昨日の冒険における戦いで、相当数の金品を拾った。

 はじめから金貨の場合もあれば、宝石類の場合もあったが。
 これだけあれば当分は金に困ることはないだろう。
 今の僕にとってスライム一匹は弱すぎる、わざわざ殺しに行くのは弱い者いじめでしかないのではなかろうか。

 相手から向かってこない限り、もしくは逃げ出すような魔物は僕は追わないことにしていた。
 ……闇の支配さえいなければ、彼らもルビスに生かされた生き物……人類の仲間のはずなのだ。

 足音をなるべく立てぬように、スライムから離れるようにして歩き始める。
 相手は気づかない。
 そのまま通り過ぎようとした時。

 足に激痛が走った。
 これは、……。
 キングコブラ。毒蛇だ。
 噛まれた部分にじわじわと熱さを感じる。
 やられた、毒だ……。
 なぜこんなところに?
 こいつらは澄んだ水のあるところに多く生息しているはずだ。
 僕の知る限りでは、泉の洞窟の辺りか……ローレシアより遠くに離れた湖、その周辺にいるはずの生き物だった。
 あいにく解毒手段を持っていない。
 ひとまず剣で毒蛇を一刀の元に切り捨てると、屈みこんで噛まれたふくらはぎに触れてみた。

「……ッ」
 触れただけで激痛が走る。
 このままでは泉へ辿りつけない。
 途中で倒れてしまうかも知れない……。

 思案した僕は、この近くに街があることを思い出した。
 そこに寄れば解毒の手段があるだろう。
 片足を引きずり街があるだろう方向へと歩き始める。
 出来れば魔物は出てきて欲しくない、倒すのは造作もないが……面倒だ。

 そんな僕の願いをよそに、茂みからアイアンアントが3匹ほど現れてしまった。

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□モドル□


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