でも、だけど、待てよ。
 ひょっとして魔力に目覚めていないだけかも知れない。
 魔力を継いでいても目覚めるのが遅かったりする例もたまにある。
 大抵は小さい頃に魔力の片鱗を見せるけど、本当にたまに、目覚めるのが遅い人間もいる。

 ともすれば素質を持ってるはずなのに一生目覚めない人もいるかも知れない、……でもそういう人はさすがに聞いたことはないけれど……。
 だけど「もう目覚めてるはずだよね」って年齢になっても魔力を扱えない人も実際に、居る。
 実を言うとぼくの妹シアもその一人だ。

 ぼくが早くから……確か物心ついた時にはもう……使えるようになってたのに対してシアはついこの前目覚めたばかりだ、それもあって父様はシアを旅に出すことを拒否した。
 そして……シアのことがあるからリークが落ち込む理由が、手にとるようにわかる。

 ロトの血族は魔法が使えるのは当たり前で。
 だからシアも一時期噂の的になったことがあった。
 魔力がない子は、ロトの血を持ってない、って。

 サマルトリアの人たちは基本的にぼくらに対して友好的だけど、でもやっぱりどうしてもそういう心無い事を言う人間もいる。
 その噂を聞きつけるたびに父様が怒っていたけど……シアが12歳の誕生日を迎えると同時に魔力の開眼を見せたのは、本当に喜ばしいことだった。
 噂に対して怒ってた父様はどうだ、と言わんばかりにパーティを開催してたっけ。
 だから、わかる。
 リークがそれで落ち込むのは。

 増してやぼくのところはぼくという王位継承者がいるからまだいいものの、リークのところは彼が王位継承者のはずだ。
 きっとシア以上に辛い目に遭ってるに違いなかった。

「……まだ目覚めてないだけ、だと思うよ」
 ぼくが呟くようにいうと彼は顔を上げてぼくを見つめた。
「ぼくの妹もこないだまで使えなくてさ。だいぶ遅くなったけどようやく目覚めたばかりなんだ。だから、……君だってロトの血族だもん、必ず使えるようになるよ!」

 そこまで言ってから彼がぽかん、と口を開けているのに気づいてぼくは思わず目の前で手を振る。
「おーい」
「あ、……すまない、間抜けな顔を見せた」

 なんだろ、そんなにびっくりするようなこと言ってないよな……。
 ぼくが首を傾げると、リークは口元を小さく綻ばせた。
 そうして。
 一言だけ。
「……ありがとう」
 と呟くと、そのまま立ち上がって部屋を出て行った。

「あ、あれ、……おやすみ?」
 明日からの話し合いするんじゃなかったっけ。
 ぼくは再び首を傾げつつも、とりあえずそろそろ眠くなったし寝ようかな、なんて思いながらベッドに潜り込んだ。

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□モドル□


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