情けない顔を、見られたくなかった。
 慌てて廊下に出た途端に後から後から涙が溢れてくる。
 どうしてだろう、城の臣下達に慰められていた時にはここまで心が動かなかった。
 通り一遍のおためごかしと感じていたのかも知れない。

 僕に本当の意味で親身になってくれた人間は……果たして城に、居たのだろうか。

 でも彼は。
 僕の事情なんてまったく知らないはずの彼がまさかあんなことを言うとは思わなかった。

 ……いや、親戚筋の王家同士だ、噂ぐらいは聞き及んでいただろう。
 そして僕が魔法の使い方なんて尋ねれば僕に魔力がないだろうことは察しがつくに違いない。
 その上で適当に流さず慰めの言葉をかけてくれた。

 それともう一つ……。
「ぼくの妹も」と彼は言っていた。
「必ず使えるようになるよ」と言った彼の力強い語調は、彼の妹も恐らく僕と同じ立場に立たされていたのだろう。
 だから、彼の言葉に重みがあったのだ。

 だめだ、……流されるな。
 そう、頭の中で誰かが囁いた。

 それは恐らくもう一人の自分なのだろう。
 他人を信用しない自分。

 けれど、信用してみたい自分もいる。

 会ったばかりで?
 人となりもまったくわからないのに?
 僕は軽く首を横に振ると天井を見上げる。

 ……いいだろう、信用、してみようじゃないか。
 僕の憧れ続けたロトの血を彼は確実に持っている。

 もっとも……それはドーヴィルも同じことなのだが。
 しかし、彼は……カインは違う。
 なぜだかそう感じた。

 そうしてから、ふいに思い出す。
「……明日からの動向の話し合いを忘れていた……」

 僕は思わず振り返り、思い切り扉を開けた。
 果たしてカインは……すやすやと、寝息を立てて眠っていた。




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□モドル□


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