「もしや貴方は……ローレシアのレイカーリス王子では!?」
 ものすごい剣幕だ。
 尋ねられ、思わず頷いてしまったが……もしも人違いだったら彼はどうしていただろう。
 だがそんな僕の思惑も意に介さず、彼は満面の笑みで胸を撫でおろした。

 僕はと言えば……衆目を集めてしまったことに居心地の悪さを感じ、荷物を手にすると慌てて彼の腕を引いて廊下へ出る。
 彼は引かれながらもきょとんとしていたが、廊下へ出た途端に再び表情を明るく戻した。

「ぼくはサマルトリアのアシュカイナ・アレフ王子です! いやー、探しましたよ! ほんと探しました!! あ、ぼくのことはカインと呼んでください、よろしく! 力を合わせて共に戦いましょう! いやー、良かった見つかってほんと良かった!!」
 一気にまくし立てるとアシュカイナ王子は両手を出して僕の右手を持ち、上下に振った。
 大げさな握手だ。
 僕は心の内でやれやれとため息を洩らすと、軽く頭を下げた。

 それにしても……こんなところで寄り道をしていたとは。
 ローレシアやサマルトリアに出向く必要性がなくなってある意味助かったが、ここで会えなければ彼を探して右往左往していたに違いない。
 はぁ、と思わず、……今度は心の内でなく本当にため息を洩らしてしまう。

「……改めまして。ローレシアのレイカーリス・アレンです」
 僕が仰々しくお辞儀をすると、王子はさもおかしそうに笑い声を上げた。
「そんなに畏まらなくていいですよ、ぼくと貴方って確か同い年でしょう?」
「ええ、そういわれれば確かに……」

 すると王子は、ふむ、とだけ頷いて顎に手を当て考え込む仕草を取った。
 何を言い出すつもりかと見守っていると。
「あの、ローレシア城内ではなんて呼ばれてました? 愛称」

 なんだか会話が斜め上だ、少し付いていけないかも知れない……。
 何とは無しに、先行きの不安を感じる。
 まあ……彼とは、ローラの門を過ぎればお別れ、なのだが。

「愛称など尋ねられても……なんだというのです」
「それで呼ぼうと思って。だってぼく達、同い年だし」
 関係あるのかそれは。

 思わず突っ込みそうになったが、会話を広げるのも面倒だったので彼の要求に素直に応えることにした。
「……レイカーリス、Leikahrlith……で、アーリル、と呼ばれておりました」
「アーリル……」

 へえ、と感嘆の息を漏らし、顔をじろじろと眺めてくる。
 何なんだ、と声を上げそうになったが堪えて様子を見ていると。
「女の子の名前みたいだね」

 不愉快な発言が飛び出した。
 そういえばつい先ごろ、特に同い年という話題になったあたりからやたら慇懃無礼のような気がする。
「知りませんよ、物心ついた頃には身内にそう呼ばれていたので」

 眉を顰めて視線を逸らして答えると、王子はさて、と呟き首を傾げて見せてから両手を軽く打った。
「リーク!」
「は?」

 彼が突然誰かを呼んだように思って辺りを見回す。
 だが、この場には僕と彼しかいない。
 僕を呼んだのか、と気づいて彼に顔を向けた。
「Leik、でリーク。……こっちの方が男らしくない? 呼びやすいし」

 知るかそんなもの……。
 何と言えばいいのか、二の句が告げない行動を次から次へと繰り出してくる。
「これからリークって呼ばせてもらうね! あそうそう、同い年だし親戚なんだし、敬語は無しにしよう。いいよね?」
 いいよね、などと念を押しているが彼の中ではもう決定事項らしく、抗っても変えるつもりはないのだろう。

「……どうぞ。お好きなように」
 呆れて肩を竦めた。
 だがそんな様子も気にせず彼はおしゃべりを続ける。

次へ



□モドル□


Presented by 小説X ver1.1,