「えへへ……どうもどうも」
「そ、の。……敬語を使うなとあまりに貴方が、……いや、お前が主張するから、僕も遠慮なく敬語は無しにさせてもらう」
 ためらいがちに言う彼にぼくの顔は思わずほころぶ。

「わかってくれて良かった!」
 もう一度手を取って握手しようとしたけど、それはさっと避けられてしまう。
 うう、なんだか警戒されてるなあ……。

 ぼくがしゅん、とうなだれて見せると急にリークはくすくすと笑い出した。
「……表情がころころと変わって面白いな……お前は」
「……えっと」
 笑われちゃった。

 あはは、と笑ってぼくは頭の後ろを掻いてから、部屋にあった椅子をずるずると引っ張ってきて彼の前に差し出した。
「とりあえずこれでやっと本格的に旅立てるね! 話し合いしよう話し合い!」
 ベッドに腰をおろしてそういうとリークはふむ、と少し考えてから椅子に腰を下ろす。

「……そのことなんだが、アシュカイナ王子」
 急に真名を呼ばれてぼくは思わず首を横に振った。

「アシュカイナ王子、じゃなくて、カイン」
「……ではカイン」
 リークは少し溜息を洩らしつつも文言を訂正して、続ける。
「お前は魔法が使えると聞いている……もし本当なら、僕に使い方を伝授してもらえないだろうか」
「魔法?」

 そりゃ、使えるけど。
 魔法の第一人者だったロトの血筋なんだもん、ロト三国の王家の人間なら誰だって使えるはず。
 彼の言葉を少し不思議に思いつつもぼくは一応頷いて見せる。

「魔法の使い方、かあ……」
 彼に問われてぼくはちょっと困ってしまった。
 魔法なんて昔習ったのを後は感覚で使ってるに過ぎない。

 まあ、基礎的な動作を教えるくらいなら、できるか……。
 そう思って羊皮紙を一枚取り出すと、ぽくは机の上にあった羽ペンを手に取り、インクをつけた。
 リークはぼくが何をするのかを黙って見つめている。

 ぼくはそこに簡単な魔法陣を一つ、描き出して見せた。
「この図は?」
「ホイミの術式」

 ペンを置くと、その上に手をかざして見せる。
 それから。
「ルビスの眷族、水と癒しの精霊神アンダの名に於いてアシュカイナ・アレフ・サマルトリアが命ずる。我の望みを受けて、彼の傷を癒したまえ」

 すると魔法陣が青白く光りはじめて、その光が……ぼくの掌に移動した。
 それと同時に魔法陣は掻き消えて、羊皮紙が真っ白になる。
 魔法が発動した証拠だ。
「……どこかケガしたり、擦りむいたりしてない?」
 尋ねられてリークは、あ、と声を上げると手袋をはずす。

 掌に豆が出来ていた。
「どうにも剣を振り回し過ぎると……。未熟な証拠で情けないが」
「そういうモンだよね、剣とかってさぁ」

 ぼくは小さく笑うと、青白く光っている掌をその豆へ差し出した。
 光が豆を包み込み、次の瞬間には光も豆も消え失せる。
 ほう、とリークが感心した息を洩らした。

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□モドル□


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