「こりゃあ……ひどいや」
 思わず洩らしたぼくの声に、昨日知り合った元ムーンブルクの兵士……デアスさんとリークが同意とばかりに頷いた。
 デアスさんは神妙な面持ちで、城の跡地に一歩歩みを進める。

 朝一番でムーンブルク城跡地にやってきたぼくらは、その惨状に目を覆わざるを得なかった。
 城壁は崩され、遥か高かったはずの尖塔も全てへし折られている。
 毒をもった魔物が毒素を撒き散らしたのか……あちこちに毒々しい色をしたヘドロが溜まっていた。

「……あれから罪の意識で一度も戻っていませんでしたが……ここまでとは……」
 眉を顰めるデアスさんに、ぼくはかぶりを振った。
「徹底的にやられた、って感じだね」
「ひとまず……王の亡骸を探そう」

 リークの言葉に頷いて見せたけど、正直亡骸がまともな形で残っているかも怪しかった。
 もし王だと判別がつかないほどに酷く崩されていたらどうしたもんか……。

「謁見室はどちらですか?」
 リークが尋ねるとデアスさんが前に出る。
「こちらです」

 門だった場所を通り抜けて内部に足を踏み入れる。
 それでも1階部は一応まだ天井が残っていた。
 2階以上は完全に失くなっていたけれど。

 足元に落ちているがれきに注意しながら通路を歩く。
 途中……足や腕が失われたり身体が欠けている亡骸がたくさん倒れていた。
 見かけるたびにぼくは胸に手を当てて冥福を祈る。

「……ハーゴンを倒した暁には全員の墓を立てさせていただきます。それまではこのままに置いておくこと……お許しください」
 祈っていた横でふいにリークが呟いた。
 ぼくもまったく同じ気持ちだ。
 本当はすぐにでもサマルトリアに応援を頼んでお墓を建ててあげられればいいんだけど、魔物が襲ってくる現状ここに人手を呼ぶのは難しそうだった。
 まずは世の中が平和になってから、だ……。

 やがて、ぼろぼろの玉座がある部屋に辿りついた。
 王の遺体は……無い。

 当然か、王だって魔法の第一人者だから自ら戦ったはずだ。
 玉座でのうのうとしていたはずがないんだから。
「……おかしいな」

 玉座の周辺を調べていたリークの言葉に、ぼくとデアスさんは顔を上げた。
「おかしいって何が?」
「お前も一国の王家の人間ならわかるだろう、……襲われる最悪の事態に備えて抜け道を作ってあるはずだ。王族だけは生き延びさせる為に」
「……ああ」

 言われて納得する。
 考えれば敗戦が決まった時に逃げ出す為の通路か何かが存在しているはずなんだ。
 ならひょっとして王と王女はそこから抜け出して逃げた?
 あのお婆さんの占いは当たっていて、王と王女はどこかで生きている?

 いや、それならぼくらの国に亡命してくるはずだ。
 だとすると亡命の道中で魔物に襲われて命を落とした、とか。
 いやいやいや待て、ローレシアに行ったっていう生き残りの兵士、彼ですら辿りついたんだから王と王女が二人揃って道中でやられるはずがない。
 ……たぶん。

 ならその生き残りの兵士は運が良かっただけで王と王女は運が悪かった?
 いや待った待った。

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□モドル□


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