なんてぼくが一人でパズルのように考え込んでいると、いきなりデアスさんが声を上げた。
「そ、そうです! 中庭の方に隠し部屋に繋がっている場所がございます……そこに逃げ込んでいるかも知れません!」
 なんだ、抜け道は玉座の間にあるわけじゃなかったのか。

 ぼくは頭からぷしゅーっと何かが抜けるのを感じながらリークに顔を向けた。
 リークが更に尋ねる。
「隠し部屋から抜け道は繋がっているのか?」
「そのはずです! 他の仲間はだめだったようですが、そこに逃げたのなら王と王女だけでも生きてらっしゃる!」

 顔を明るくして彼は期待に満ちた表情になる。
 うん、生きていて……隠し部屋にずっと篭もっているか、それともムーンペタ辺りに逃げ込んで再起を図っているか。
 その可能性は高くなってきた。

 篭もることも考えられて作られた場所なら、食糧なんかも貯蔵してるはずだ。
「行ってみよう!」
 ぼくらは頷き合って、中庭へと急いで足を向けた。

 その時。
 後ろから低い低い唸り声が、聞こえる。
 何だろうと振り向くと……倒れていた兵士達が、むくり、むくり、と起き上がってきた。
 え、な、なんだ、ちょっと……待って。
 生きてた?

「! 二人とも伏せろ!」
 リークが叫んで背中に吊るしていた鋼鉄の剣を抜き、起き上がった兵士に踊りかかる。
 言われて伏せると、そのとたんにぼくとデアスさんの頭がそれぞれあった辺りを何かが通過していった。

 通過した物は後ろの床に落ちる、じゅわっと変な音がする。
 ……溶解液だ。

 顔を上げると、ぼろぼろに身体が欠けまくっていて絶対に生きているはずのない兵士達がのろのろとこちらへ向かってきていた。
 あれは、そう、か……そういうことか。
「リビングデッド……」

 ぼくは生きているかのように動くその死体達の名前をつぶやいた。
 闇の魔術で、魔物として働かされている死体。
 なんておぞましい話だろうかと眉を顰める。

 リークが、うち一人の首を一撃で斬り落とした。
 首を落とされた者はその場に崩れ落ちる。
「カイン、援護を頼む!」
「了解!」

 ぼくは覚えたばかりの魔法、ギラの魔法陣を描いて詠唱をはじめた。
 指先に、ぼくにとっては熱くない炎の姿が現れる。
 相手に向けて放つとそれはまっすぐに飛んでいき、リビングデッドの身体に火が移った。

 デアスさんは呆然としている。
「デアスさん、大丈夫ですか?」
 心配して声をかけるけど、ぼくの声が聞こえなかったらしく呆然としたまま死体達を見つめながら、言った。

「カールス、……ノイン、ジィード……お前たち、俺だ、わからないのか!」
 悲痛に叫ぶ。
 そうか、彼らは……デアスさんの元仲間達、だったんだ……。
「デアス殿! もう彼らは貴方の友人ではない!」
 リークが叫んだ。

 それでも彼は、反応しない。
 ただ彼らを見つめている。

 ぼくは彼の前に出ると買ったばかりの鉄の槍を振り上げた。
 銅の剣に比べると少し重いけれど……なんとか扱えそうだ。

「やぁ!」
 思い切り前に付き出してやり、ギラで燃えているけれどまだ倒れないそいつを串刺しにする。
 そいつは断末魔の叫びを上げて倒れ伏した。
 その段になってようやく、デアスさんが我に返った顔つきになる。
 槍を手に構え、今ぼくが攻撃した相手の後ろに居たやつに攻撃を繰り出した。

 ……やがて。
 ぼくら三人の活躍に寄って謁見室は元の静けさを取り戻した。
 なんてことだろう……デアスさんにとっての仲間達がこんな姿で蘇って……。
 しかもそれを自らの手で殺さなければならなかった彼の苦痛は、ぼくには及びもつかないことだったに違いない……。

 うなだれて佇む彼にリークが歩み寄った。
「……必ず仇を取ります。王と王女を……探しましょう」
 リークに言われて顔を上げる。
 感傷に浸る間もなく先を急がせるのは少し酷な気もしたけれど、もし二人が生きているならそれこそ一刻を争う事態なわけだ。

 デアスさんは大きく息を吸い込むと、「はい」と真剣な面持ちで頷いた。

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□モドル□


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