そう、つまり。
「その施設の教会としての機能を無くせば」その街は街として成り立たなくなり、魔物達が徘徊するフィールドと同然となるんだ。
 魔物達はルビス様との盟約を護る必要なんて無くなるから、街や村に侵入して人を襲ってしまう。
 なら、その機能を無くしたのは誰?
 無くさせたのは誰?

 ……魔物には出来ないことだ。
 だったら一つしかあり得ない。
 ルビス神を裏切った「人間」。
 破壊神の信徒の状態の人間にしかそれは出来ない行為なんだ。

 その、わざと牢屋に入れられたっていう破壊神信徒は城内の、……これもルビス様を裏切った誰かに手引きさせたのかも知れない。
 それとも考えられるのは牢屋の看守を口説き落として宗旨替えさせてしまったか、わからないけれど……ともかく外部の人間とやりとりして、ムーンブルクの教会を害したに違いなかった。

 教会を害するには教会の神父を殺す、ルビス像を壊してしまう、施設のどこかに隠されているルビス様との契約の証を刻んだ魔法陣を消してしまう……いくつかの方法がある。
 逆に言えばこの3つが揃ってないとそこは教会としては成り立たない。

 てっとり早いのは、像を壊すことだ。
 教会は、神父に何かあった場合に備えて副官の神父を必ず置いている。
 神父というのは大抵が高位の魔術師だから、その二人ともを殺すのは実行が難しいけれど、神父達が目を話した隙にルビス像を叩き壊すことなら一人で可能だろう。
 そんなに大きい像じゃない、等身大の大人の女性程度だから。
 まさかルビス信徒だった人間が近寄ってきていきなり像を壊してしまうなんて大抵の人は考えないと思う。

 ルビス様の加護を受けられなくなれば破壊神の加護を受けている魔物側の方が圧倒的に強い。
 しかも油断していたとなればなおさら……。

 ぼくは背筋に薄ら寒いものを感じた。
 人間が裏切って、人間を殺す。
 しかも跡形もなく滅ぼしてしまうなんて。
 何がその人間をそうさせるんだろう。

 頭を軽く一つ振り、ぼくは王様とリークに顔を向けた。
 リークが頷く。

「……陛下。王太女殿下の姿が見当たらないようですが」
 どちらとも取れる意味合いで、リークが尋ねる。
 幽霊としての王女が見当たらない、それとも生きているはずなのに見当たらない。
 ぼくらは、あの老女の言葉から王女は生きているだろうと確信してる。
 ここに幽霊として立っていないなら、後は……。
 リークがどういう意味で尋ねたのかはぼくにはすぐわかった。

「娘は……あの忌々しき闇の神官に……呪いを掛けられて、いずこかへと連れ去られた」
「呪いを掛けられた?」
 ぼくがオウム返しに尋ねると、王様は頷いて話を続ける。
「犬の姿へと変えられる呪い。……だが、ムーンブルクの他の民も兵も全てを滅ぼしたあやつが、娘だけをなぜ殺さなかったのか……それだけが知れぬ」
「犬の……姿に」
 ぼくが呟いたとたん、

「なら、……ローズマリー王女は生きているのですね!」

 リークが突然声を大きく上げたのでぼくとデアスさんはびっくりしてしまった。
 それから、デアスさんは口をぱくぱくとさせて
「姫が生きておられるのですか!」
 リークに負けんばかりの声を上げる。

 ……ぼくは王女が生きているって確信があったのはさっきも考えた通りで、だから王様の言葉に驚かなかったんだけど(それでもやっぱり生きてるとはっきり聞けたのは嬉しかったけど)でもそれ以上にリークが驚き、そして安堵してるのに不思議な気持ちになった。
 リークは王様に話の続きを促そうと頷く。
「陛下、……いずこかへ、というそのいずこは知れていないのですか? もしわかるならば僕達が彼女を救いにゆきます」
 彼の期待をかけたその言葉に、しかし王様は首をゆっくりと横に振った。

「あの時、犬に変えられたまま連れて行かれた、それだけが私の知る真実だ。もしかして犬にされた後殺されたやも知れぬが、そうならば私と同じ姿になり、このムーンブルクに帰って来ているはず。そうではないから……生きておるのだと思う」
「……では、居場所はわからないと」
 王様が頷く。

 ぼくとリークは顔を見合わせた。
 なぜ犬に変化させたのか、その理由もわからないけど、連れ去った先が敵の本拠地だったりしたら完全に現状ではお手上げだ。
 お姫様を助けに向かう勇者さながら……ぼく達の曾爺様、勇者アレフのような道筋を辿るはめになるのかも知れない。
 ぼくがそう考えた時。
「レンドルフ陛下。王女の居場所は存じませんが、……その呪いを解く方法を存じております」


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□モドル□


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