「上司?」
 リークの言葉に
「……上級兵士です。恐らく、城の中で陛下のお姿と同じ様に……居るかと」
「そう、ですか、わかりました……探しましょう」

「……トゥアールか。そうか、あやつなら……聞いておるのだろうな……」
 王様がぼそぼそと、独り言のように言った。
 なんだろう。なんだか変な雰囲気だ。

 デアスさんがゴーグルを外してリークに返す。
 リークはそれを身に付けると、王様に一礼した。
 ぼくも慌てて一緒にお辞儀する。
「必ず……必ず王女は救います。そして命に懸けて護ってみせます」

 王様は満足そうに頷いた。
「私はここから動けぬ。頼む……我が娘ローズマリーを。そして、ハーゴンを……滅ぼしてくれ。私達の仇を取ってくれ……」

 ぼくらは頷くと謁見室を後にした。
 その途端にスモークという煙の化け物と、タホドラキーと言われるドラキーの進化系がぼくらを襲ってきた。




 色々出てくる雑魚敵を蹴散らしながら、ぼく達はデアスさんに案内されて廃墟の中を進む。
「ここが中庭、か」
 ゴーグルを額に戻していたぼくらの目に映るのは、これまたぼろぼろに荒らされた中庭と思しき場所だった。
 ここで王様と王女が過ごしていた時に襲われた、ってわけか……。
「ここに抜け穴があるはずです。その先にもしかして生き残りがいるかも知れません。このように魔物が徘徊する中にはなかなか出られないでしょうから……」
 デアスさんの話にぼくらは中庭を散り散りに探し始めた。

 なんとなく嫌な物が胸をよぎる。
 ムーンブルクが落城してから結構時間が経ってる。
 もしそこに逃げ込んでたとしても、今日まで生きててくれるものなんだろうか……。

 中庭は割と、広い。
 抜け穴ったって地下に通じてるものなのかわからないし、壁にあるものかも知れない。
 ひょっとして魔法の呪文で封じられていて、ぼく達じゃ開けられないかも知れないし、そうでなくても鍵とか必要なのに違いないし……なんてごにょごにょ呟いていると、整然と並んでいるレンガが一か所だけほんの少し、窪んでいるのがわかった。

 これ怪しい。
 ぼくの得意の第六感が囁いてる。
 でも怪しいと言っても、……。
「う、うぐぐぐぐぐぐぐ」
 押してみても何も起こらない。

 と。
 後ろから勢いよく拳が伸びてきて、そのくぼみを思い切り殴った。
 ぼくが驚いて振り返るとやはりといえばやはり、その拳の主はリークだ。

 やがて、何かがごとん、と落ちる音がする。
 レンガが後ろに落っこちたみたいだ。
「……リーク、今の」
「ちょっと押した程度で開いてしまうならば王族専用の緊急の抜け道、の意味がない。……どこか、開いているはずだ」

 もっともな話だ。
 今の窪みが怪しいと感じたのはぼくの六感だけれど、それが正解だとするなら強力な力で殴りつけるか、強力な魔力を与えるかしなければ仕掛けが動作しない、と考えるのは自然なことのように思う。

「こちらです! お二人とも!」

 植えられた一本の大きな木、その木陰からデアスさんが声を上げた。
 慌てて駆けつけてみると根元に大きな穴が開いている。
「入り込んだ後草でカムフラージュする為か」
 リークが感心したように頷いた。

「よし、入ってみよう。……暗いけど明かり、ぼくの魔法でいい?」
「途中で魔力が切れないように気をつけてくれよ」
 ぼくはギラを唱えて指先に炎を灯した。
 魔力を調整してあるから小さな小さな炎だ、でもこれで十分。
 普段の二分の一程度の消費だと思う。
 しばらく持ちそうだ。

 中は地下へ続く階段になっていた。
 随分長く使われていない……かと思いきや、
「……誰かが通った後がある……」
 階段に積もった埃が足跡の形に避けられている……。
 それも……二人分。
 もしかして。
「中に誰かいるかも知れないな。気をつけろ」

 リークに言われるまでもない。
 ぼくは頷いて先頭を歩き、辺りを照らしながら進んだ。

 ……やがて、行き止まり。
 誰かがいそうな気配は……ない。
「……戻った足跡はなかったのに、どうして誰も……」
 ぼくが言った途端、デアスさんが「トゥアール隊長……」と呟いた。

「デアスさん?」
 彼を見ると、壁際で屈みこんでいる。
 近寄って照らしてみたら……それは、一人の兵士の……遺骸だった。
「これ、は、……」

「姫を連れてここに逃げ込んだんだろう……しかし敵に殺され、姫を奪われた……」
 リークが遺骸を見つめながら呟く。
 その話にぼくはハッとしてゴーグルを掛けてみた。
「やっぱり! トゥアールさんですね!?」

 ぼくが声を上げるのを聞いてリークも慌ててゴーグルを掛ける。
 そこには、目の前の遺骸と同じ姿の中年兵士が立っていた。


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□モドル□


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