「あ……はぁ」
思わず間抜けな声を洩らした。 王女はしばらくの間、黙って僕を見つめている。 と。 ふと、デアス殿がとうに泣き止んで、しかも王女と同じように僕を見つめているのに気づいた。 なんだ。いったい何なんだ、何が起きてるんだ。
「……ローズマリー様……」 デアス殿が何かを言いたげに彼女を見たが、彼女はかぶりを振ってそれを制する。 「大変失礼いたしました、レイカーリス・アレン王子。……お二人ともこれからどうぞよろしくお願いいたします」 そういってまとっていたワンピースの裾をつまむと礼儀正しくお辞儀した。 僕はなんだか腑に落ちない気持ちになりながらもお辞儀を返す。
カインもわけがわからない、と首を傾げてから慌てて取り繕うように両手を振った。 「と、とりあえずさ、今夜は宿に泊まって明日からどうするか話し合おうよ。王女も疲れてるだろうし」 「そうだな。王女が無事であることを知ればムーンペタの街の皆も喜ぶだろうが、発表はしばらく控えよう。まだ何があるか知れない」 僕の言葉に三人が頷いたのを確認すると、僕は彼らを促して宿へと向かった。
……それにしても、本当に……彼女は昔の幼かった時よりも更に、更に母に似てきていた。 どうしてここまで似ているのだろう。 その理由が知れることが、果たしてこの先々訪れるのだろうか……。 僕は彼女の横顔を一瞥してそんなことを考えていた。
後編に続く
|