ぼくは少し唸って考えてから、さっき自分で言った「とある単語」に思い当たった。
「あ、ああそうか! ごめんごめん、ぼくらに言えない買い物とかあるよな、うん。リークにもうちょっと多めにお金貰って来てあげるよ、それで好きな物買ってきたらいいよ」
 言われてマリアは顔を赤くして俯いてしまう。
 なるべく濁して言ったつもりだったけどやっぱり彼女にとっては恥ずかしかったみたいで……。

 今まで同性との旅路だったからあんまり気にかけてなかったけど……彼女は着の身着のまま、何も荷物を持たずにここに来てる。
 ということは、……その、着替えとか。いろいろと欲しい物があるはずで。
 具体的に何を欲しがってるか考えるとぼくが恥ずかしくなるのでやめた。

 ぼくはリークに軽く話してさっき貰った200ゴールドから追加で100ゴールドを受け取り彼女に渡す。
 マリアは嬉しそうにお金を持って商品棚を見回り始めた。
 ぼくは邪魔にならないように、と店を出ることにする。
「さすがにここで襲われることはないだろうし、色々買い物あると思うから福引所の前で待ってるよ。ゆっくり買い物してて」
 ぼくの言葉に彼女が頷くのを確認してから、リークの待ってる福引所のそばにやってくると彼はさっそく怪訝そうな顔をした。
「おい。王女はどうした」
「女の子には、特有の難しい買い物が色々あるんだよ。男のぼくがそばにいたら買いにくいだろ?」

 ぼくに言われてリークはハテナをいっぱい頭の上に浮かべた。
 ほーらやっぱりだ、女の子の買い物とかそういうこと考えてたわけじゃなかったんだよこいつ。
 正確にいうと、「女は買い物が長いから付き合うのが面倒」だとかどうせそんなこと考えてたんだろう。

「……女特有の難しい買い物、か。よくわからないな……」
 リークが誰に言うとは無しにぽつりと呟いた。

「まあいつかわかるんじゃないのかな。恋人とか出来たら」
「そんなものだろうか……」
 なおも悩む彼に苦笑しつつも、ぼくはふと、福引所のそばに立っている建物に目をやった。

 家じゃないな。
 なんだろう、……ごつい扉が付けられていて。
 大きな錠がかかっている。
 扉と錠には鎖が何重にも掛けられていた。
 そして、窓らしきものが一つもない。

 なんだか変な建物だ、この街の雰囲気から妙に浮いてる。
 街のど真ん中になんでこんな厳重な建物が。
「リーク、リーク」

 ぼくは彼の服の袖をちょいちょいと引っ張った。
「どうした」
「あの建物、なんだか変な感じしない?」

 ぼくの言葉にリークは建物をじーっと眺め始めた。
 しばらく、考え込んで。
「……別に、何も」
 と気のない返事をしてくる。
「え、やたら厳重だし窓はないし、なんだか変じゃないか?」
 とぼくが抗議すると。

「何か封じてあるんだろう」
 しれっとリークは答えた。
「封じてる? こんな街のど真ん中に?」

 ぼくの疑問にリークは頷いて、答えてくれる。
「予想なんだが……この街を恐らく過去に魔物が襲ったんだろう。そして、あまりにも強くて倒せなかった。もしくは倒してはいけない事情があった。だから強力な魔術の使い手がこの場に封印したのではないかと思う。封印したその上に目隠しのために建物を建てた、というところだろうな」
「それなら街の外で封印すればいいのに。それにさ、もしそうなら立ち入り禁止とか書いとくべきじゃないかな、危ないだろ」
 変なの、とぼくが呟くとリークは首を振った。

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□モドル□


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