「街の外に魔物をおびき出す余裕もなかったんだろう。封印をほどこしたその場から下手に動かすと封印が解けてしまう。……注意書きを付けようものならお前みたいな好奇心旺盛な奴が入りたがるだろう? 街にとって、空気状態にしておくのが何よりいいんだよこういうのは」
「ぼくみたいのがってどういう意味」
 ぼくは頬を膨らませてむくれて見せた。
 なんなんだよもう。

 そんな様子を見てリークはおかしそうに笑っている。
 ……ふぅん、こいつってこんな風に笑ったりも出来るんだなあ。

「……ま、何かが封印されている、とは決まっていないが」
 リークが今までの自分の演説を全否定するような言葉を発したのでぼくはぽかんとしてしまった。
「じゃあ、結局何なんだよあれ」
「知るか。僕はこの街の住人じゃない」

 だったら適当なこと答えるなよ……。
 やれやれ、とぼくは肩をすくめて、まだ戻ってこないマリアがいる店の方に顔を向ける。
「まだかなあ」
「まだなんじゃないか」

 愛想のない返事をしながらも、リークは背負い袋から本を取り出して読み始めた。
 最近読んでる魔法呪文の書だ。
 ぼくは退屈になってしまって、壁に寄りかかり足をぶらぶらさせた。
 そして。
 あの建物に少し近寄ってみようかな、なんて思った。

 リークは本を読んでるからあそこから離れることはないだろう、マリアが来ても大丈夫。
 そう思ってそっと建物に近寄ってみる。

 分厚いレンガが組まれている、本当に厳重な建物だ。
 ひょっとして宝物でも眠ってるんじゃないだろうか。
 街の宝物……でも、そうだとしたらやっぱりこんな目立つ場所に目立つように建物を置くのはおかしいよな……。

 住民には迂闊にこの中に入ってほしくはないけど、この建物の中身を動かすことが出来ないから仕方なくここに置いてある、っていうのがしっくりくる。
 そうすると……さっきリークの言ってたことが悔しいけど当てはまりそうな気がしてきた。
「開けられないかな」
 ぼくはぼそ、と呟いて扉の鍵穴を覗き込んだ。

 窓がない建物だから中は真っ暗で何も見えない。
 確か以前学院で教えられた中に解錠の呪法があった気がする。
 とはいえ、ぼくはちょっとさぼり気味タイプだったし、何より高位魔法だからその魔法の詠唱どころか魔法陣もあまり覚えてない。

 それでも見様見真似で、陣を描いてみた。
 そして魔力を送りこんでみる。
 それから、詠唱。

「ルビスの眷族、星と光と大気をつかさどる精霊よ、今ここに施されている縛めを解きたまえ」

 ……。
 …………。
 
 何も起こらない。
「ですよね」
 ぼくはがっかりして溜息を洩らした。
 それからもう一度、鍵穴を覗き込んでみる。
 中は相変わらず真っ暗……。

 ……あれ。

次へ



□モドル□


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