謙遜か本音かはわからないが、カインは僕と違って人見知りをあまりしないタイプのようで……すぐに彼らと打ち解けた。
 羨ましいような、そうでもないような。

 などと考えつつも。
「……恐れ入る。時間が時間なので、明日の朝までここで過ごさせていただきたいのだが……了承願えるだろうか。明日の朝一番にムーンブルク地方へ向かいたい」
「王子がそう望むのであらせられるならば」

 先日追い返された時とは随分様子が違う。
 まあ、僕の命令よりも父上の命令の方が優先するのは重々わかっている、そして僕が父上の命令に従ってここへ現れたのだからこれ以降は僕の命令は父上の命令と同じ重みというわけだ。

 そんなことを噛み締めつつも、ひとまず夕食を取ろうという話になり、僕らは彼らからムーンブルク地方の情勢を尋ねながら食事を取ることにした。

 先日やってきたムーンブルクからの使者は当然ながらここを通ったようで、その時にローレシアまで付き添ったのも彼らだということだ。
 その道中ムーンブルク落城について話を聞いたところによると……突然前触れもなく、王と王女がくつろいでいたところに魔物達が襲来したらしい。

 なぜムーンブルクのみを襲ったのか。
 なぜそのままローレシアやサマルトリアを襲撃に来なかったのか。
 それはわからないとのことだった。

 ローラの門からならばサマルトリアの方が近かっただろうが、使者を送った守番がローレシアの人間だったためローレシアにやってきたとのこと。
 付き添う者の立場から言えばまあそうだろう、自国の王への報告を優先するに決まっている。

 しかし……もしも先にサマルトリアに行っていれば。
 手当が間に合ったかも知れない、彼は死なずにすんだかも知れない……。
 それを思うと心中複雑になった。
 なるべく顔に出さないようにはしたが。

「……リーク?」
 出さないようにはしたが、カインには何事か勘づかれてしまったらしく心配そうに顔を覗き込んでくる。
「……早くムーンブルク城の様子を見に行かなければ、な」

 僕は誤魔化すようにそういうと、毛布を手に取った。
「話も聞けたし今夜はそろそろ休もう。明日も早い」
「うん……」

 何やら気がかりそうな顔をしているが別に今無理に話すことでもない。
 そう考えて、僕はそのまま毛布に包まった。

 ……翌朝。
 彼らに礼を告げると僕らは門を抜け、大陸の方へと足を踏み出すことにする。
 門扉が開かれる。
 その向こうは石造りの壁で覆われた通路になっていた。

 海底トンネルというやつだ、曾爺さんのアレフはここを掘りぬけるまではムーンブルクに居を構えていたらしいが。
 なぜそこまでしてローレシア地方に渡って自国を築いたのかはよくわからない。
 ローレシア大陸に何か特別なものでもあったのだろうか。

「それでは、世話になりました」
「旅のご武運をお祈りしております」

 通路には泉の洞窟と同じく松明が設置されていたので歩くのに支障はなかった。
 海底を通るだけあって、少しじめじめしている。

 時折天井から雫が滴っていた。
「天井が崩れたら上から海の水がザバーッ! だね。そうしたらぼくらはハーゴンに会う前にいきなり終わりだ」
 カインの冗談ともつかないような言葉に僕も頷いて見せた。
 そろそろ通路の整備が必要かも知れない。 

 二人で歩いていると、向こうから誰かがやって来るのが見えた。
 人?
 ……目を凝らしてみる。
 それは確かに人の形をしていた、が……。

 それが何者か咄嗟に判断した僕は、鎖鎌を取り出して身構えた。
「カイン! 敵だ!」
「えっ、え、敵!?」

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□モドル□


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