やってきた相手は手に杖を持ち同じくこちらに気づいて身構える。
 あの衣装は……邪教の神官の衣装だ。
 基本的に僕らが神と崇めるのはルビスとその眷族神だが、それ以外の宗教も存在しているというのは学んでいた。
 特に、破壊神を崇める宗教が存在するという。

 破壊神はルビスとは対極にある存在で、ルビス及びその信徒を敵とみなして滅ぼそうとしているらしい。
 向こうに取って僕らが敵ならば、僕らにとっても彼らは敵だ。
 その破壊神を象徴するマークが衣装に刻まれていた。

「破壊神信徒の魔術士……かな」
「だろうな。……お前は少し下がっていろ、どの程度の力を持っているか僕が様子を見る」
「了解」

 カインは少し下がって身構える。
 僕は武器を手に、相手との距離を詰めた。
 ……だが。

 魔術士は杖を後ろのカインの方へ向けると、魔法陣を素早く描き出して詠唱文句を唱え始めた。
「我らが崇高なる破壊神よ、その御力を我が魔力を礎にしてもたらしたまえ。破壊の炎よ!」
 ルビス側の詠唱は習っていて多少は知っているけれど……破壊神側の詠唱はまったく知らない。

 何の魔法か考え込んだ瞬間に、杖の先から炎が飛び出した。
「……! カイン、避けろ!」
「!」

 炎、そうかあれは「ギラ」の魔法だ。
 炎の力によって相手を攻撃する。
 詠唱は違っても魔法の効果そのものはルビス側にも存在しているのと同じだった。

 そうか、破壊神と契約している者は五大精霊神との契約がなくとも魔法が使えるのか……。
 などとカインがかわすのを見ながら悠長に考えてしまう。
「あ、あぶなかった」

 カインはため息を漏らすと、相手に向き直って魔法陣を描きはじめる。
「そっちがそうならお返しだ!……ルビスの眷属、火の精霊神ガイア。御身の支配する力に於いて、邪悪なる者を焼き払いたまえ。聖なる炎を我が手に!」

 さきほど魔術士が放ってきたのとほぼ同規模の炎がカインの手に現れたかと思うと、それが解き放たれて相手に向かっていった。
 相手はそれをかわそうとしたが、わずかにタイミングが合わず炎に触れてしまう。
 途端、炎が奴の服に燃え広がった。
「ぐあああああ!」

 叫ぶ相手に僕は近寄り、とどめとばかりに斬り捨てる。
 魔術士は倒れこむと……そのまま、絶命した。

 人の姿をした相手を殺すのはどうにも、魔物相手の数倍後味が悪い。
 しかし向こうも殺しに来ているのだから、情を見せればそれはすなわち隙となってしまう。
 僕はカインに振り向いて、相手が絶命した合図に頷いた。

「……今の魔法は」
「ソイツと同じだよ、契約相手は違うけどね……。炎の魔法、ギラ」
「いつの間に……」

 つい昨日、解毒の魔法ですら必死に使っていた彼が、蟻と戦えない、バブルスライムをやっと3匹倒した、と息が上がっていた彼が。
 急に敵を一撃で下せる魔法を扱っていたことに驚いてしまう。
「…昨日、あまりにも情けなかったからさ、ゆうべ必死に覚えたんだ。君が寝ている間に」
「……お前、睡眠は?」


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□モドル□


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