尋ねると決まり悪そうに頭の後ろを掻く。
「1時間くらいはちゃんと寝たよ」
「それはちゃんと寝たとは言わないんだ、……まったく」
 ため息を漏らして僕は小さく笑った。

 僕が「戦えない」といったのを彼はずいぶん気にしていたということだ。
 単におちゃらけただけの奴ではないということを改めて思い知る。
 やはりなんだかんだと、彼はルビスの加護を受けた勇者の子孫で、その自覚も持っているのだろう。

 ……今更ながら。
 彼となら、上手くやっていけるかも知れないと感じた。
「……昨日のことは、すまない。ずいぶん気にさせた」
「い、いや、その」

 彼は慌てて首を横に振る。
「君に言われた通りなんだ。情けない、って思った。……君に頼りっぱなしじゃこれからの旅、意味がない……ああやってきつく言われなきゃ気付けなかったよ。ありがとう」
 彼の素直な性格は僕とは明らかに違う。
 ああいう性格だからこそ、初めて会う人間ともすぐに打ち解けることができるのだろう。
 それは僕には到底得られそうにない才能だと思われた。

「こちらこそ、……これからもよろしく頼む。頼りにしてる」
「えへへ……」
 互いに照れ笑いすると、僕らはさて、と歩みを進めた。

 途中で分かれ道に出る。
「……どうして分かれてるんだろう。大陸間を繋いでいるだけのはずなのに」
 カインの当然ともいえる疑問に僕も頷いた。
「この先に何かある、ということだろうな……」
「行く? 行っちゃう?」

 彼が期待をかける様子に僕も同意する。
「何も無ければ無いで仕方がない、……が、何かあったはずなのにそれを見過ごすというのは情けない話だ」
 通路は今の本線から脇に逸れる形となっている、明らかに大陸へ渡る道ではない。
 僕らはその支線へと足を踏み出した。

 やがて地上へと上がる階段が現れ、そこから光が漏れている。
 上に何がある?
 僕らは警戒しながらも階段を上がった。

 ……小さな、小さな小さな島だ。
 島といってもいいのか。
 ただの中洲と呼ぶべき規模の土地。

 そこに、小屋が一つ、建っていた。
「あれは……?」
 カインは呟くように言うと僕へ顔を向けてくる。
 当然ながら調べなくてはならない。
 歩み寄り、扉の取っ手に手をかけた。

 開くと薄暗い中に……おおよそ生活感のないかび臭さが漂う。
 テーブルにベッド、棚、暖炉。
 それだけが質素に置かれていて、……そして、一人の老婆がテーブルの脇の椅子に座してりんごを剥いていた。
「おや、まあ」

 彼女は僕らの姿を認めると小さく笑う。
「こんなところに人が来るとはね」
 しわくちゃに笑う老婆。
「突然の訪問失礼した、……私はローレシアの王子、レイカーリス・アレンと申します。まさか人が住んでいるとは思わず、小屋を見つけて訪ねてしまいました」

 深く礼をしてみせると老女はうんうん、と頷きながら立ち上がる。
「とするとそちらのお方はサマルトリアの王子かい?」

 指されてカインは慌てふためいてお辞儀した。
「サマルトリアのアシュカイナ・アレフです!」
「……僕らを知っているのですか」
 僕が尋ねると、彼女は手招きしてきた。


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□モドル□


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