2人でぽかん、としてしまった。
 元自国の王子がどうとか言っていなかったか、さっき。
 ……微妙な情報だが、これでここで暮らしているというならばまあ恵んでやるくらいはいいだろう、と思った。
 それに軍資金はたっぷりある。

 僕は懐から金貨袋を取り出して彼女に手渡した。
 老女は満足げに頷く。
「……物分りがいいね。たったこれだけしか情報を与えないと、役に立たないといって怒り出す客が多いんだよ。……そこで素直に支払った相手にはあたしももう少しだけ情報をやることにしてる」

 なんだか謀られた気分だが、素直に従って正解だったようだ。
 老女は再び何かの呪文を呟いて水晶を覗いた。
「ムーンブルクの城。そこで重要な情報を得られる。けど、ただ行くだけじゃだめだ。あんたたちは立ち往生する」
「なら、どうすればいい?」

 尋ねると老女は僕とカインが身に付けていたゴーグルをそれぞれ、指した。
「それに魔術をかけてやるよ。城に行ったらゴーグルを掛ければいい。……2人で50ゴールド」

「……」
 唖然としてしまった。
 更に金を取ろうというのか……。
 追加情報だとはいうが、この情報にどれだけ信ぴょう性があるかわからない。
 
 どうするか、と悩んでいるとカインが僕の服のすそを引っ張ってきた。
「掛けて、貰おう。魔術」
「……信用できると思うか?」
「わからないけれど、……ダメもとっていうか……。50ゴールドくらいなら……ね」

 50ゴールドくらい、か。
 僕が城を出るときに持ったのと同額だ。
 やはり少し金銭感覚が違っているのかも知れない、……まあ平和なサマルトリアの王室で過ごしていた彼には50ゴールドは大した金額には感じないのだろう。
「……わかった」

 頷いて、僕は金貨を追加で差し出した。
 老女はそれを受け取ってにやりと微笑む。
 金貨を懐にしまってから、両手を差し出すと僕とカインのゴーグルにそれぞれ手をかざした。
 彼女の手が微かに光るが、それはすぐに光を失う。
「これでいいよ」

 そういうと、彼女は少しよろめきながらベッドへと座り込んでしまう。
 息が上がっている、……たったあれだけの動作でずいぶん疲れきったようだ。
 もしこれが演技でなければ、彼女の言っている事も力も本物だったということだろうか。
 僕は軽く礼をした。
「……ありがとうございます。それでは、そろそろ失礼いたします」

「ああ。あんたたちにルビスの加護があらんことを」







 薄暗い通路をようやく抜けると、そこはローラ岬と呼ばれる岬。
 今通ってきた通路をぼくは振り返ってから、リークに顔を向けた。
「向こうには門があって、ローラの門なんて仰々しい名前がついてるのにこっちは守番も何もいないんだね」
 ぼくが呟くようにというとリークは頷いた。

「最初にロトの国が興ったのは向こうの大陸だからな。色々と事情があるのかも知れない」
「それこそ大人の、ってやつか」
 軽く言ってからさて、と辺りを見回す。
 このまま南にまっすぐ向かえばムーンペタ、っていうムーンブルク配下の……いや、配下だった、街があるはずだ。まずはそこを目指そうってことになってる。

 それにしても、気になる。
 さっきのお婆さん。
 もし彼女の言っていることがぼくらの思った通りなら……。


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□モドル□


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