「……リーク。どう思う」
「……」

 ぼくの言葉の意図を計りかねてるのかどうなのか、彼は黙ってる。
 黙って見つめているとしばらくして、口を開いた。
「王女が生きていて僕らの救いを求めている……かも知れない、という話のことか」
「うん」
 ぼくは頷いてから通路にもう一度振り返った。

「王女は生きている、でもどこにいるかわからない……。それが本当ならひょっとしてハーゴンに攫われたのかも知れない」
「通常なら殺すところを何かの事情で殺せなかったとするなら、それが妥当なところだろう」
 ぼくの言葉にリークが頷く。
「……まあ、あの婆さんの占いとやらが本当だっていうなら、な」
「まぁね」

 はは、と小さく笑うとぼくは洞窟から繋がる地面、草が生え始めている辺りに足を進めた。
「とりあえず行こうか。王女が生きてるとしても手がかりがなさすぎるし、ハーゴンに捕まってるならどっちみち今はどうしようもないし」
「ああ」

 そんなことをいいながら歩き出そうとすれば、かぶとムカデが3匹ほど、ぼく達の道すがらを塞ぐのだった。




「ほとんど一本道状態だったけど……敵、多すぎないか」
 ムーンペタ。
 ここはさっきも言った通りムーンブルクの元配下にあった街で、かなりの繁華街だ。
 魔物に襲われたなんて様子は微塵も感じられない、ということはハーゴンはムーンブルクは襲ったけどこの街には手を出さなかったってことだ。

 人々が行きかう。
 リリザもそこそこだったけど、それよりも更に人が多く感じられる。
 久々の賑わいにぼくは思わず顔を綻ばせた。
「やっぱり賑やかなところっていいなあ。気持ちが明るくなる!」
「……そうか?」

 なんだか暗い返事をよこしたリークを見ると、返事と同じく暗い顔になっている。
「どうしたの」
「……いや、……人混みが苦手なんだ」

 その情けない言葉にぼくは思わず声をあげて笑ってしまった。
「あははは、あはは、そっか、人見知りタイプだもんな君! ……でもそんなんじゃこれから情報収集とかしなきゃなんないのにやってけないんじゃないの?」
 ぼくの言葉にリークはむぅっと頬を膨らませる。
「それはお前に全部任せる」
「な、なんだよそれ!」

 さっさとぼくを置いて歩いていこうとする彼の背中に思わず声を荒げてしまった。
 と。
 リークが足を止めた。
 まったくもう、なんて呟きながらリークに歩み寄ると、彼は足元をじっと凝視していた。

 何だろうと思って彼の視線を追う。

 犬。
 子犬が、一匹。

 リークの靴をふんふん、と興味深げに嗅いでいる。
 美しい亜麻色の毛並みだ、野良犬には見えないけれど……でも首輪も付けてない。

「エサでも欲しいのかな?」
 ぼくはそーっと子犬に近寄ってしゃがみこんでみた。
 子犬はしっぽを振ってぼくを見上げてくる。
 その隣にリークも並んでしゃがみこんできた。

「くーん」
 子犬が小さく鳴く。
 可愛いな。旅の途中じゃなけりゃ飼ってあげたいんだけど。
 ぼくがそう思って見つめていると、リークが手袋をはずして子犬の頭を撫でた。
 人見知りだけど動物見知りはしないらしい。

 子犬は嬉しそうに撫でられている。
「腹が減っているのか?」
 彼が尋ねた言葉に子犬は少しだけ首を傾げたように見えた。
「犬だもん、ぼくらの言葉がわかるはずないよ」
 とぼくが言った途端に。


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□モドル□


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