リークの顔を見ると彼も首を横に振る。
「街には人がたくさん居るのに……僕らにだけ執拗にこだわっているみたいだな」
「初めて会ったのに……。ひょっとして前の飼い主の匂いと似てるとか」

 はて、と首をかしげつつも、ぼくらは子犬への未練を振り切るために宿屋の扉を潜った。
 さすがにそこまでは付いてこない。
 カウンターに行くと受付のおじさんが新聞を読んでいた。
「こんにちは、……部屋をお願いしたいんですが」

 ぼくらに気づきおじさんは新聞を片付けて向き直る。
「いらっしゃいませ。お二人で一晩24ゴールドですが、よろしいでしょうか」
 言われてリークは頷き、金貨袋を取り出してお金を支払う。

 二人部屋に案内されて荷物を下ろし。
「そういや魔物から回収した金品でお金じゃないものは換金してこないといけないね」
「そうだな……、ついでにムーンブルクの状況を街の人から聞けるといいんだが」

 リークの言葉にぼくはおかしくって笑ってしまった。
「何がおかしい」
「だってさ、ここに着いたばかりの時は"情報収集はお前に任せる"って」

 ぼくの指摘に彼は気まずそうに視線を逸らす。
 気が変わった理由はわかっていた、あの子犬だ。
 気持ちが緩んでついでに警戒も緩んだんだろう。
「なんだか君ってぼくが今まで付き合ったタイプにいなかったよ」
「変わっている、という意味か?」

 変わってる。
 一言ですませればそういうことなんだと思うけれど、ただそう一言ですませるものじゃなくて、なんといったらいいのか。
「……ぼくと正反対のタイプだから、上手くやっていけると思うってことさ」
「ふぅん」
 気のない返事を返してくる。

 上手くいく、ってせっかくの言葉を軽くスルーされてちょっとだけぼくはがっかりした。
 本当にちょっとだけ、だからまあそんなに気にしなかったんだけど。
 ……と。

「僕も、……お前のようなタイプは初めてだ。国民とは当然同じ立場で接することもなかったし、城の奴らは……どうにも硬くて壁があった。……同じ立場で屈託なくこうして何でも話してくれるような相手は……お前が初めてなんだよ」
 その言葉にぼくのがっかりは払拭される。
 なんだいもう、こいつって本当に素直じゃないやつだなあ、なんて心の中で軽く悪態をついて。

「……改めて、これからよろしく」
 手を差し出した。
 リークが握り返してくるとぼくらは固く握手した。

「で、さ……そろそろおなか減ったしお昼ご飯にしようよ。……もうお昼もだいぶ過ぎてるけど。情報収集はその後でいいよね?」
「ああ」
 ぼくらはさっそく街の食堂へ繰り出すことにした。






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□モドル□


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