「なるほど、ヒカリゴケのおかげで松明がなくともどうにか進める」
「松明ほど明るくないから魔物が出た時ちょっと苦労しそうだけどね。……あ、足元気をつけて」
 適当に談話しながら道なりに歩いてみる。
 とくに迷路にはなってない、基本的に一本道の通路だ。

 たまに奥まったところに足を踏み入れてもすぐに行き止まりになって、ぼくらは正解ルートを易々と進むことができた。
「泉の洞窟は明るかったね」
「定期的に通路に飾っている松明を取り換えているらしいからな。……それをしているのはあそこに居た守人の老人のようだが」
「あの人か。大変だね……といっても彼ならなんてことないかな」

 ぼくの言葉にリークが反応して振り向いた。
「なんてことない、とは?」
「ああ、いや……元高位神官なら魔法でぱぱーっとやっちゃうんだろうな、って」
 魔法、と聞いてリークは少しだけ顔を暗くする。

 けれど、すぐに顔を上げると前方の通路を凝視した。
「……リーク?」
 無言で前方を見つめる彼は、ぼくの問いに答えない。
 リークの視線の先にぼくも目をやると……ヒカリゴケの明かりの中にぼんやりと何かが照らされている。
 それも、たくさん。
「……まずいな」

 リークが舌打ちした。
 あれは……。
 軍隊アリの群れだ……。

「……何匹いるかな」
 ごくり、と息を飲んで呟くようにいうけれど、リークはぼくのそれを無視して腰に携えていた鎖鎌を手にする。
「お前、戦えるか」

 問われてはた、と思い当たった。
 リリザからここまで魔物が運良く出て来なかったから、リークはぼくの戦闘力を良く知らないはずだ。
 ……で、当のぼくと言えばはっきり言って。
 一度も、
 そう……ただの一度も魔物と戦ったことがない。
 一応大なめくじとそれらしきことはしたけど満足に闘えずに逃げてきたんだ。

「……たぶん」
 腰に下げていた棍棒に手をやると、リークはそれを見て呆れた顔をした。
「……なんだその武器は」
「そ、その、色々ありましてこれしか、……その」

「……」

 ぼくらが雑談? している間にもアリの群れがにじり寄って来る。
 そろそろどうすべきか決断しないと危険だ。
 リークは少し黙ってから。
 背負い袋から何かを取り出して、僕に渡してきた。

 ひと振りの、剣。
「これ、は……銅の剣? 武器を二つも持っていたの?」
「……僕の大切な剣だ。折るなよ」

 言うなり、彼はアリに飛びかかっていった。
 ぼくも慌てて後に続く。

 手にした剣は、なにやらぼくの手にしっくりと収まった。
 一匹に目を付けて剣を叩きつけてみる。
 うう、硬い。

 相手の硬い皮膚に少しだけめり込んだように思ったけど、あまりダメージは与えられていない。
 「折るな」と言われて気を使ってることもあるけど、それ以上に……ぶっちゃけ、ぼくが……弱い。
 ふとリークに目をやると、物の見事な鎌さばきですでに一匹を斬り去っていた。

「お見事!」
「茶化している場合か、……、…!」

 ぼくの後ろを見てリークが言葉を詰まらせた。
 何だろう、と振り向いた瞬間に。

 首元に激しい痛みを、感じた。
「……っ!」

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□モドル□


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