しばらく、無言。
 明らかにぼくに対して怒ってるな、と感じた。
 そんな怒られても、とは思うけれど、でもどう弁解したらいいのかもわからない。

 5分ほど歩いた時。
「……おい」
 リークがぼくを見ないまま声をかけてきた。
「…………なに」
 相手の無愛想な物言いにぼくも無愛想返しをしてしまう。

 するとリークはようやくこちらに振り向いた。
 真剣な顔をしている。
「……お前の持っていた棍棒、見せてみろ」
「え? あ、うん……」

 おずおずと差し出す。
 リークはそれを受け取ってしげしげと眺めてから、ぼくに返してきた。
「……本当にただの棍棒だな。一国の王子様がここまで持ってきているからよほど特別なものなのかと思った」
「それ、……兵士から買った物だから。しかも練習用の武器らしいし」

 ぼくの回答にリークはやれやれ、と溜息を洩らす。
 なんだか嫌な感じ。
 ちょっとむっとして見せると、
「それでよくここまで来られたものだ。……魔物に出会ったらどうしていた?」
 尋ねられる。

「魔物は、……運良くほとんど出会わなくて……会っても逃げたりしたからあまり、戦わなかった……」
「……それでこの先やっていくつもりだったのか」

 どんどんリークの声が不機嫌になっていく。
 ぼくも釣られて不機嫌になった。
 ……いや、わかってる、ぼくが悪い。
 実戦をまるで積んでないぼくが悪い。

 棍棒にしたって、お金をまるまる差し出さなければリリザでもう少しいい物が買えたはずなんだ、わかってる……わかってるけど。
 やっぱり胸の奥がむかむかと込み上げてくる。
「仕方、ないだろう、だって本当に……出会わなかったん、だし」
「出会う出会わないはいいとして、……せめてもう少し良い武器を用意すればいいだろうに」
「棍棒買うのにお金使い果たした」


 ぼくの言葉にリークが目を丸くする。
「……いくらだったんだそれ」
「500ゴールド持ってたけど……それ、全部兵士さんにあげてきた。本当なら買わせてもらえないはずのものだったし」

 リークは黙り込んでしまった。
 何を思案してるんだろう、ぼくから目を逸らしている。
 僕も黙って様子を見る。

 ややあって。
「……お前、帰れ」

 唐突な言葉に、一瞬何を言われたのかわからなかった。

「え?」
「帰れといったんだ。サマルトリアに」

 思わず口をぱくぱくさせてしまう。
 なんでこんなこと言われてるんだろう、……言われる理由はなんとなくわかってはいるけれど、感情が追いつかない。
「なんで君にそんなこと言われなきゃならないんだよ」
 怒り口調で尋ねると彼は冷たく言い放った。

「魔物と満足に戦えない。なのに武器はどうしようもない物しか持っていない。これからの道中のことを何も考えず、金を無駄に消費する。……正直言って足手まといだ」

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□モドル□


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