「そん、……」
 言い返せない、いらいらむかむかするけれど、言い返せない。

 何を返したらいい。
 ぼくは反論しようと口を開けた。
「ぼくは、……ロトの子孫として、……勇者の子孫として、行かなきゃならないから、君に言われる筋合いは、ない」

 この言葉が彼の琴線に触れるのはわかっていた。
 けれどロトの子孫だから行かなきゃいけないっていうのは事実で、ぼくがここにこうして彼と立っているのもその理由に他ならない。
 だから、帰れと言われて帰るわけにはいかなかった。

 リークはあからさまに眉を顰める。
 けれど、次の瞬間こう言った。

「……わかった。別行動をしよう」
「別行動?」

 オウム返しに尋ねるとリークは頷いて続けた。
「本当なら僕はこの先ずっと一人で行きたい。けれどローラの門が、……父上の妨害のせいで、お前を連れていないと通れないようにさせられているんだ」
 それは知らなかった。

 そういえばローレシア王、ぼくとリークが合流してなかったことに怒ってたな……。
 なんて思い出しながら相手の話しの続きを聞く。
「だからローラの門までは仕方がないから共に行動してやる。けれどそこを越えたら別々に旅をしよう。……お前が勇者ロトの子孫で、その程度のおちゃらけた状態で旅を続けられると思うなら。僕と一緒でなくてもいいはずだ」
「そ、れは……」

 彼の怒りはもっともで、ぼくはそれ以上言い返すことが出来ない。
 さっきの戦いだって……彼がいなければぼくは間違いなく死んでいた。

 うなだれて見せるとリークはきびすを返して通路の前方に足を向ける。
「成立だ。とりあえずここにある国宝とやらをさっさと手に入れてローラの門へ向かおう」

 促されて、ぼくはとぼとぼと彼の後ろについて歩きはじめる。
 それからしばらく魔物は出なかったけれど、ぼくとリークもまたずっと無言のままだった。




 祭壇がある。
 その上にこじんまりと置かれている箱。
 ロトの紋様が入ったその小さな箱は、明らかにぼくらが求めていた国宝だった。

「……あった」
 ぼくは小さく言うと小走りに駆け寄り、箱を手に取る。
 箱に鍵はかかっておらず、開けてみるとそこには銀色に光る美しい鍵があった。
 この箱の魔法で錆びずに守られていたみたいだ。

「それが国宝の鍵、か」
 ぼくは頷いて見せると、リークに鍵を差し出す。
「なんだ?」
 不思議そうに見つめ返してくる相手の手を取ると、ぼくはそれを握らせた。

「ローラの門でお別れになるんだろ? 君が持っていてくれないか」
「……」

 自覚はしてる、そこでお別れになるならサマルトリアへ帰るか……それとも一人で旅を続けてどこかで人知れず命を落とすか。
 どちらにしろぼく一人で旅を成功させるのは無理だと、自覚していた。
 リークは今握らされた鍵をじっと見つめている。
 と。

「……これはサマルトリアの国宝だろう。お前が持っていろ」

次へ



□モドル□


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