「ローラの門で一晩過ごさせてもらおう。門の先がどうなっているか見当がつかない、明るい時間に行った方がいい。今夜は守番達に情勢を聞きながら明日からの計画を練ろう」
 それには同意だ。
 ぼくらはそれで決定すると、ローラの門へと足を向けた。

 ……つもりだった。
 ぼくがスタスタと歩いていると、リークが付いてこないことに気づく。
 振り返ると後ろの方で跪いている。
「……リーク、どうしたの!」

 驚いて彼の元に戻ってみると、リークは先ほどバブルスライムが張り付いていた場所に手を当てて苦しそうにしていた。
 ……紫色に腫れあがっている。
「これ、は……まさか」
「毒を注入されたらしい……、しまった、買い置きを使い果たしていた……」

 そんな、ぼくは毒消し草なんて持ってない。
 ……今からリリザに向かうんじゃ恐らく間に合わない。
 毒が身体に回りきって、彼の命は……。
 ならここで待たせてぼくだけリリザに向かって毒消し草を買ってくる?
 いや、同じだ。
 待たせてる間にアウトになるかも知れない、それとも彼が弱っている隙に魔物が現れて襲うかも知れない。

 どの選択肢もだめだ、……どうしよう、どうする、どうすればいい……。
 ぼくは頭をフル回転させる。

 ふいに。
 何かが、頭にひっかかった。

 まだ完全に覚えきっていない、「あれ」。
 思い出せ、思い出せ思い出せ思い出せ。
 城で魔法の勉強をしていた時に習った中にあった、確かにあった。
 ……身体の穢れを消す魔法が。

 あの魔法陣の形は?
 あの詠唱文句は?

「……」

 リークの顔色が悪い。
 息も上がっている。
 ぼくは、辺りに落ちていた木の枝を拾うとたどたどしく地面に魔法陣を描き始めた。
 慣れているホイミなら宙に正確に描ける、けれど覚えていないあの魔法はどこにどの図が正確に配置されているかを目視できる形で描き出さないと、無理だ。
 どうにか少し時間がかかりつつも、描き終える。
 そして……一つ一つを噛み締めるように、詠唱の文句を呟く。

「ルビスの眷族、癒しの精霊神アンダよ。ルビスの眷族、水の精霊神アンダよ。アシュカイナ・アレフ・サマルトリアが命ずる。その清らかなる力我に託し、毒の穢れを払いたまえ」

 魔法陣に手をかざす。
 魔法陣は合ってる?
 詠唱文句は合ってる?

 ぼくは胸をドキドキさせながら、様子を見守った。
 ……だめだ、発動しない。

 魔法陣が間違ってた?
 それとも詠唱が間違ってた?
 いや、詠唱は合ってるはずだ。
 魔法陣が大変だったからとにかく詠唱だけでも頑張って覚えた。

 ならきっと魔法陣が間違ってる。
 慌てて描き直す。

 けれどそれも発動しなかった。
「ここのマークの位置が違うのかな、……うん、こっちだった気がする」
 ぼそぼそと呟いて再び描き直す。

 どうしよう。
 これが失敗したら終わりだ、もう魔力が残ってない……。

 もう一度詠唱した。
 手をかざし、発動を待つ。

次へ



□モドル□


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