やがて。
 魔法陣が青白い光を放ち始める。
 その光がぼくの手に移動したかと思うと、地面に描いた図式は瞬く間に消え去った。

 ぼくは慌ててその手をリークの傷口にかざす。
 光が今度はリークの身体へと移動し……やがて、紫色に腫れていた部分が元の色を取り戻した。
「や、……っ、た……」

 ぼくは大きく息を洩らすと、その場にへたり込んでしまった。
 リークが小さく呻く。
 顔を上げると、目を丸くしてぼくを見つめてきた。
「今のは……」
「解毒の呪法、キアリー……。なんとか思い出しながらやってみたよ、成功して……よかった」

 はは、と力なく笑うとリークもそれにつられて微笑んだ。
 それから視線を落として急に気まずそうな顔をする。
 ぽつりと。
「……お前が戦えない、だなんて言えた義理じゃないな」

 自責の言葉。
 彼が今どういう想いで居るのかが手に取るようにわかる……。
「気にしなくていいよ、持ちつ持たれつっていうか……ぼくは君にだいぶ助けてもらってるし。おあいこってことでいい?」
 ぼくがそういうとリークはおかしそうに笑って立ち上がり、ぼくの手を取った。
「助かった、ありがとう」
「ん、じゃあ行こうか!」

 ……本当は、おあいこなんかじゃなかった。
 ぼくが軍隊アリにやられた時ホイミで回復していたら、確実に魔力が足りなくなっていたはずだ。
 つまりリークは天性の勘で自分を救ったのも同然で。

 ま、いいか。
 なんてお気楽に考えることにする。
 どっちみちぼくがキアリーを思い出せなければ同じことだったから。
 おあいこで……いいよね。

 彼の手に引かれて立ち上がると、ぼくらは今度こそローラの門を目指した。
 うん……大丈夫。
 また毒の怪我を受けても今度は。
 今度こそは、しっかり使える。

 ぼくは、キアリーの魔法を一つ、会得した。





「王子、無事にアシュカイナ王子と合流されたようで」
 門の守番の老人に開口一番に言われて僕は苦笑する。
 隣に立っていたカインが前に一歩出て、お辞儀した。
「改めまして、サマルトリアのアシュカイナ・アレフです」
 カインの挨拶に、老人と……それからそばにいた二人の兵士もお辞儀を返す。

「我が国の王子が大変お世話になっております」

 この門は名称通りローラの門……僕らの曾婆さん、ローラ王妃の名前から名付けられた門だ。
三国のちょうど中間の位置にあり、どの国が管轄するかと会議になった際にやはりロト三国の祖、ローレシアが管理するのが良いという話になったらしい。
 だから彼らには僕の顔は完全に知れてしまっていて、……その僕が共の者を連れていればそれはサマルトリアの王子だろうと一目でわかったに違いなかった。
 それならばカインでなくとも誰か他の人間をカモフラージュで雇う手もあったかも知れないが、もし彼らがカインの顔を知っていたら面倒だと考えそれはしなかった。
 そして、僕のその考えは当たっていたようだ。

「ロトの式典の際に何度かお見かけしております。あの少年がずいぶんたくましくなられて」
 老人に言われてカインは照れ笑いをした。
「ぼくなんててんでダメです。リー……レイカーリス王子の足元にも及びません」

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□モドル□


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