ロトの式典。
 ロト三国と呼ばれるローレシア、サマルトリア、ムーンブルクでは数年に一度、英雄を讃えるためのその祭りを各国持ち回りで行っていた。
 そうして今年はローレシアの番のようだ。
 僕も家臣とはいえ元はロトの血筋の出身だということで今回の式典への同行を許された。

 ……会える。
 彼女に、会える。
 彼女と僕が知り合いであることを悟られてはならないとひた隠していた気持ちではあったものの、式典の日が近づくに連れ心が浮き立ってしまう。
 そうして、もう一人、……会っておきたい人物がローレシアには、居た。
 いや、一人?
 正確には、さらにもう一人。
 逢いたい人物は、三人。

 彼女と、その夫……そして、その、息子。
 ローラント・アレフ・ローレシアとその妻リーネスタ・カーマイン・ローレシア。
 二人の息子であるレイカーリス・アレン・ローレシア。
 僕と同じ名を持つ、その息子に僕はどうしても一目逢っておきたかったのだ。

 夫と息子……二人を前にして、彼女は……リーナは僕にどういう態度を取るだろうか。
 わかっている……。
 結果は、見えている。
 だけれど僕は、はやる気持ちを抑えられなかった。

 式典の当日となり、王と王妃、王女を伴って少数の近衛兵を供に僕らはローレシアへやって来た。
 数年の一度の祭りだけあって盛大な準備がなされており、集まる人数も尋常ではない。
 国民の大多数がこの城下へ集まっているのだろう。
 更に諸国の王も招かれている。
 当然、ローラ姫の祖国であるラダトームの王も。

 そして、今回の祭りはローレシア王が妃を娶り、更に子が生まれてから初めてのものになる。
 諸国の王がローレシア王妃と王子の姿を見るのは初めてのことになる……はずだった。

「申し訳ない。妃は体調が優れぬ為、下がらせて頂いております。息子だけでも紹介させていただきましょう」
 ローレシア王はそう言って隣に立たせていた息子を一歩前に出させた。

「ローレシア王子、レイカーリス・アレン・ローレシアです。本日は、お忙しいところをおこしいただき、まことにありがとうございました」
 幼い口調ながらもしっかりとした挨拶の辞を述べる彼に、一同は拍手した。

 僕は、その大勢にまぎれて後方から……彼らを眺める。
 ……似ている。
 彼女に。
 リーナに、とても似ている……。
 
 僕はわざとムーンブルク王達から離れ、近衛兵と同行するようにして遠くから様子を伺った。
 ムーンブルク王がマリアをレイカーリス王子に会わせている。
 二人は少しだけ照れた様子で、軽くお辞儀を交わしていた。
 そうしていると今度はサマルトリア王がその息子と娘を連れてやってきて、子供たちを一堂に会させた。
 無邪気なものだ、王子も王女も同じ年頃の友人があまりいないのか、互いに見会ってから笑っている。

 王達は互いを懐かしんでかどうなのか、会話の内容が聞こえないが……なにやら世間話でもしているようだった。
 僕は……ここへ何をしに来たのだろう。
 ため息を洩らし、外の空気を吸おうと会場を後にしようとすると。
「アレン様!」

 マリアの声がしたかと思ったとたん、手を掴まれ引っ張られた。
「そんなところで何をしている、アレン神官。そなたもロトの血筋の者だろう。こちらへ来なさい」
 ムーンブルク王が手招きする。
 ……僕の顔を見ると同時に。
 ローレシア王が、顔をこわばらせるのがわかった。

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□モドル□


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