「……久しぶりだね。ロラン」
 僕が愛称で彼を呼ぶと、彼は懐かしんだ顔で歩み寄ってきた。
「まさかアレン、お前が今のムーンブルク王家に仕えているとは思わなかった」
「だろうね」

 僕は苦笑して首を振る。
「でも、"なぜ仕えているか"は、わかるだろう?」
「……ああ」
 所在無く生返事をするとロランは窓の外へ視線を向ける。
 そうしてまた、僕に視線を戻す。
「今日は……リーナに、会いに来たのか?」

 その言葉に僕は少しだけ詰まった。
「……それも、ある。だから会えなくて残念だった。……考えてみれば会えなくて当然だろうけど」
「すまない。彼女を守るには人前に出さない、しか方法がない……」
「わかってる」
 はは、と空笑いをして僕は首を振った。

 そして、疑問に思っていたことを口にする。
「……あの子は、……"君"の子、か?」
 僕の問いにロランは少しだけ溜めて、言った。
「……、……もちろん」

 その反応で十分だった。
 小さく笑ってみせると僕は肩をすくめた。
「わかった。ごめん。……昔の親友と、その息子に会いに来ただけだよ僕は。幸せそうでよかった」
 僕の半分皮肉を込めた言葉にロランは難しそうな顔をした。
 それから、僕を手招きする。

 脇にあった部屋の扉を開け、再び手招きすると彼はその部屋に入っていった。
 何事かと思ってとりあえず後に続く。
 扉を閉めると、ロランは大きくため息を洩らした。
「……リーナが、責められているんだ。アーリル……レイカーリスは、私の子ではないだろう、と。不義の子であろう、と」
「……なん、……」

 てっきり平和に過ごしているだろうと思っていたのに、彼のその言葉は僕に衝撃を与えた。
 思わず肩に掴みかかってしまう。
「どう、どういうことだ、どうして、そんな」
「皮肉なことに私は……ムーンブルクの前王と同じ境遇を辿ってしまっている、らしい。アーリルが魔法を使えないことを発端として弟のドーヴィルが……どこからか調査して掴んだようだ」
「魔法……」

 そうか、と僕は舌打ちした。
 強力な魔法の使い手だったロトの子孫であれば魔法が使えて当然のはずなのに、レイカーリスはそれが使えない。
 魔法の使えない王妃と、魔法の使えない間男との子であろうなどと世間の者に考えられても仕方のないことだった。

「……内乱を誘発せん罪で罰すればいいじゃないか。君の王としての権限で」
「そうしたいのはやまやまだが……結局のところドーヴィルがその噂を流しているという証拠がない」
「なんだ。情けない。せっかく王になったっていうのに。……リーナを任せた甲斐がないじゃないか」
 呆れて言うと、彼はうなだれてしまった。
「すまない、……もう、私にはどうしたら良いのか、……」

 完全に意気消沈する彼の肩を僕は軽く叩いてやる。
「……待っていてくれ。僕の計画が成功すればリーナも堂々と姿を表せるようになる、そして君の子も……そんな疑いは晴らせるようになるから。きっと」
「……アレン」

 少しだけ安堵したロランだが、すぐに厳しい顔つきに戻る。
「……今日の会合で一つだけ気になることがあった。他の王達は気にしていないようだったが……もし私の考え通りならお前はとんでもないことをしでかしていることになるぞ」
 彼の言葉に僕は小さく笑う。
 視線を逸らすと、彼の問いに答えるために、口を開いた。

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□モドル□


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