「僕は……リーナを救えればそれでいい。この身が犠牲になろうとも」
 しかしロランは首を横に振る。
「お前のやっていることで、アーリルにも影響が及んでいても?」
「ああ。……だろうな、彼がロトの血筋であるのにも関わらず魔法が使えないのは……多分に僕のせいなんだろうな……」
「わかっているならどうして」

 追いすがってくる彼を僕は片手で制した。
「リーナの為なんだ。わかってくれ。……すべてが終われば、レイカーリスも……きっとロトの血筋としての証明が出来るようになる」
「アレン……」

 僕はロランから離れると、扉に手を掛けた。
「色々と漏れてもまずいだろうし……僕は明日、一足お先にここを発つよ。そしてもう、二度と君の前には姿を現さない。レイカーリスの前にも」
「そん、……」
「さよなら。親友」

 僕を引きとめようとして思いとどまったのが、空気から伝わった。
 僕はその場を後にして寝室へと足を向けた。






「アレン・ノースアリア。貴殿を国外永久追放の刑に処する」
 そう、冷たく通達される。
 裁判での僕の言葉はまったく聞きいれられなかった。
「死刑にならなかっただでもありがたく思うがいい」
 王の冷たい言葉に僕は鬼のように彼を睨み付ける。
 彼はそれに怯みながらも、言った。

「わが国にとっての不穏分子と情が通じていたなどと。……もう一度だけ聞く、それに答えられれば国外追放も無かったことにする。それどころか今までと同じ待遇でお前を迎えよう。……フリージア・ローラ・ムーンブルクの行方を、知ってはおらぬか?」
「……何度も申しましたが……存じません」
「……ならば、仕方がない。残念だ……お前の能力を高く買っていた私に盾突くなどとは」

 王のため息交じりの言葉に僕は軽く笑ってみせた。
「何をおっしゃっているのです、王。僕の能力を買っていた? ご冗談を。あなたが買っていたのは僕に流れるサマルトリア王家の血だ。それに、僕はフリージア嬢の行方など知らないと申しているだけです。盾突く気など毛頭ありませんがそれをそう捉えられるのならば結構。追放にでも死刑にでも、どうとでもなさってください」
「……」

 僕の嫌味を込めた言葉に王は答えない。
 てっきり怒り出すと思っていたのに。
 しばらく黙ってから、王は逸らしていた視線を僕に向けた。
「何か……国を出る前に望みはないか。一つだけ、叶えてやる」

 望み。
 今の僕にとってムーンブルクになど何も惜しむものはない。
 なら、何を望むべきか。
 国を出た後の僕の行方を追うな、か?
 それとも……。

 思案した末、僕は言った。
「……マリア、……いえ、ローズマリー王女には……僕が死んだ、とお伝えください」
 一つだけ残った心。
 唯一の良心とも言える、あの小さな娘。
 マリアには僕がこの国に取っての罪人として追放された、などとは知られたくなかった。
「わかった。その願い、聞き入れよう」

 王の言葉に僕は満足して頷いた。
 そうして、2人の兵士に両脇を固められたまま、謁見室を去ろうとする。
 その、時。
「……アレン、もう一度だけ聞く。フリージアの行方を……知らぬか」
「知りません」
 僕はきっぱりとそういうと、その場を後にした。

 国を出て、さてこれからどうするべきか。
 サマルトリアに帰る?
 それとも、親友の居る……かつての恋人の居るローレシアに向かう?
 いや。もう二度と会わないと決めた。
 彼にもそう告げた。

 ならば僕には向かうべき場所がある。
 実はとうに決めていたのだ、リーナ……そして、レイカーリス王子を救うためにはいつかあの地へ行くしかないのだと。
 僕はずいぶん良くしてやっていた兵士たちに名残惜しまれながら、ムーンブルクを後にした。

 待っていて、リーナ。
 必ず君を助け出すから。

 心の中で呟くと、僕は大地へ足を踏み出した。

END



□モドル□


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