「戦いの前に軽く参加規定を説明させていただこう。まず一つ目、何人で挑んでもよい。ただし人数が少ないほど高価な褒美が得られる可能性も高い。賞金は当然人数の頭割り。二つ目、戦いの前に補助の魔法を使ってはならない。戦いが始まってからなら可能。三つ目、選手外の者からのサポートを受けてはならない。……以上だ」

 戦いの前に担当の兵士からそう説明は受けていたものの、ぼくらは当然3人で戦うことにする。
 相手は、キラータイガー……凶暴な豹の姿の魔物だ。
 当然ながら普通の豹よりも何倍もの強さを誇っていて……、いや、普通の豹だって強いんだから。
 この敵は、それとは比べ物にならなかった。

 ……たぶん。

 でも、多くの魔物達との戦いを経験していたぼくらは、違っていた。
 3人のチームワークというのも大きい、そして何より。
 とにかくリークがすごい。
 向こうが力押しで来るのに力負けしていない。

 ぼくとマリアは彼の剣技の補助をすれば十二分だ、というほどに。
 ……ひょっとしてリーク一人で戦っても勝てたんじゃないかしら。

 なんて一人ごちつつ、余裕が出来たのでふいに王様の席に目をやった。

 キラータイガーとの戦いの様子を見ていたフレッド王が、父親になにやら耳打ちしているのをぼくは見逃さなかった。
 でも、それは一瞬のこと。
 すぐに頭の隅に追いやられてしまう。

「もう一発、……!」
 ぼくはギラの詠唱を始め、すばやく相手へ炎を放った。
 毛に炎がついたのを認めたキラータイガーは地面の砂へ身体を擦りつける。
「今だ、リーク!」
 ぼくの合図と同時にリークが躍り出た。

 そして、頭を骨ごと、一突き。
 キラータイガーはしばらくの間はのたうち回っていたが、やがて動かなくなった。
 一瞬の静寂が訪れる。
 少しあって。

「お見事!」
 王の席から拍手と歓声が上がった。
 見やるとフレッド王が立ち上がって力強い拍手を送ってる。
 つられて、他の観衆も拍手を始めた。
 喝采がコロシアムを包み込んだ。



 控室で救護係に治癒の呪法をかけてもらったぼくらは、やれやれと息をつきながら顔を見合わせていた。
「ちょっと面倒なことになってたけど……これでやっと、月の紋章を王から頂けるね」
 水を飲みながらいうぼくの言葉にリークとマリアは頷く。

「……それにしても」
 不機嫌そうに呟くリークに顔を向けると、彼は吐き捨てるように言葉を続けた。
「あのお遊びで、今まで何人殺してきたんだ」
 その言葉にぼくとマリアははっとする。

 そうなんだ、勝てば褒美と栄光だけど負ければ死。
 ぼくらはキラータイガーなんて及びもつかない大敵と戦おうとしているんだから、ちょうど良い腕鳴らしに過ぎなかったけど……。
 地面や壁に張り付いていた、茶色くなった染み。
 あれは歴戦の勇者たちのそれに、ほかならなかった。

「この国はあまり長く居たくないわ。早々に仕事を片付けて出発しましょう」
「マリアに同意だ」
 短くいうとリークは立ちあがった。
 と、扉を叩く音がした。
「失礼してもよろしいか」
 フレッド王の声だ。
 今の話を聞かれてただろうか……。
 肝を冷やしつつも、ぼくは「どうぞ」と声をかける。

次へ



□モドル□


Presented by 小説X ver1.1,