扉が開くと、嬉しそうな笑顔を浮かべる王の顔がそこにあった。
「素晴らしい戦いぶりだったよ君たち。特に……レイカーリス・アレン王子。君の鍛え上げられた肉体は素晴らしい!」

 入って来るなり大絶賛し、それからしげしげとリークの身体を眺める相手にものすごく嫌悪感を露わにした顔をしながらも、リークは
「どうも」
とだけ、短く返事した。

「強き者は美しい。強さは正義だ。君たちは今まで見た者たちの中で最も華麗に美しく、あの豹を倒した」
 ずかずかと遠慮のない音を立てて部屋に入って来ると、フレッドは黙り気味のぼくらを見回した。

 それからもう一度リークに視線を向ける。
「どのようにしてそう強くなれたのかを一度伺いたい、どうだね。俺が奢るから、飲まないか? レイカーリス王子」
「……私だけですか」

 明らかに不満げなリークの声に、フレッド王は、ふ、と笑みを零す。
「アシュカイナ王子とローズマリー王女はお疲れだろう。だが君は体力がまだ余っていると見た。ついでに手合わせでも願えたら、と思ってね」

 リークはよほどこの男が気に入らないようで、救いを求めるようにぼくとマリアに視線を向ける。
 マリアは少し悩む仕草を見せていたけど、ぼくはちょっと思いついてぽんと手を打つとリークの肩を叩いて耳打ちした。

「ガイアの鎧のありかを聞けるかも知れない」
「ガイアの鎧……それがあればこれからの戦況は楽になるだろうが、しかし……」
 眉根を寄せてずいぶん考え込んでから、リークはようやくしぶしぶと

「……わかりました。お供します」
「よろしい! ……アシュカイナ王子とローズマリー王女はホテルに戻ってゆっくり休みたまえ。最高のもてなしをするように申しつけておくから」
「ははは、ありがとうございます……」
 薄ら寒いものを感じながら、ぼくはマリアを促して部屋を後にした。
 マリアは気にするようにリークを何度か振り返るけど、仕方なくぼくと一緒に出て行った。



「……で? どこへ飲みに? 城下町の繁華街ですか?」
 僕が憮然としていうと、フレディオス王は僕の肩を抱いて促した。
「貴族ご用達の店があるんだ、案内しよう」
 どうにも胡散臭さが抜けない。
 これで僕達が弱ければ人間未満の扱いになっているはずなのだ。
 そもそも、その前にキラータイガーに殺されていたのかも知れないが。

 裏通りにやってくると、横道に入り何の変哲もないただの扉をフレディオスが規則的に叩く。
 ややあって扉が開き、中年の男が出迎えた。
「これはこれは、フレディオス様。今日のコロシアムも大盛況でしたな。……どうぞどうぞ」

 得意げな顔でフレディオスは頷くと、「ささ、入って入って」と僕を促した。
 肩は抱かれたままだ、気色が悪い。
 中に入る際に僕は入口が狭い振りをして自然に見えるよう、相手の腕の中から身体を離した。
 フレディオスはさほど気にしていないようだ。

 中は、こじんまりとしたバーになっていた。
 薄暗いオレンジ色の明かりの中、数名の貴族らしき人々が酒を飲んだりビリヤードやダーツ、チェスなどを楽しんでいる。

 僕がきょろきょろとあたりを見回していると、フレディオスはカウンターに腰かけて僕を手招きした。
 軽く一礼すると、隣に座って帽子をはずす。
 今まで帽子に覆われて潰れていた髪を、僕は一度頭を振って整えた。

「ふーん」
 にやにやと厭らしい笑みを浮かべながら、王が見つめてくる。
 僕は視線を合わせないようにしながら「で?」と短く問うた。
「で? とは?」

「私に何か話があったのでしょう。ただ飲みに誘うだけならカイン達も一緒でも構わないと思ったのですが。手合わせなど、横で見ていればいいだろうし」
 僕の言葉にフレディオスはおかしそうに笑う。
「なら単刀直入に言おう。言いたいことはいくつかある」

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□モドル□


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