「あははははははははは、あははは、あはははははははは、ははは、あははははははははははは、いや、ごめん、あははははははははははははは」
 帰って来るなり青ざめているリークにぼくらが事情を問うと、リークは息も絶え絶えに今起こった出来事を話した。
 そしてぼくのこの反応である。
「……笑いすぎだカイン」
「い、いやその、あはははは、はぁ、はぁ、はぁ、ごめん、そっか、フレッド王はそっちの人か、あはははははははは、大変だったなリーク!」
 まだ笑いが治まらず、肩を叩きながらもぼくは笑い続ける。
 リークは額に「む」の字を浮かべて抗議した。
「どんな魔物相手よりも怖かった僕の気持ちがわかるかお前に。……いや、あれなら魔物1000匹斬りしてた方がましだ」
「天下の最強王子にも怖いものがあったってことかあ」

 ようやく笑いを治めて息を整えるとぼくは腕組みした。
 そして、リークを気の毒そうに見ているマリア。
「困ったわね、フレディオス様がそんな方だったなんて。……おまけに今の話を聞いて思ったのだけれど……このままだと紋章も渡してくれないのじゃないかしら」
「そ、それは困る。せっかく豹に勝ったのに」
 マリアの言葉にぼくは慌てふためいた。
 それから真顔になってリークに向き直ると
「世界平和の為に、君の貞操を捧げてみないか」
「ふざけるな!」
 拳で思い切り殴り飛ばされ、ぼくは部屋の隅で頭を押さえてうずくまる。

「いったぁ……君の馬鹿力で思い切り殴ったらぼく程度じゃ死ぬぞ……」
「人の気も知らないで下らないことをいうからだ」
 鼻から息を洩らしていきり立つリークに、マリアはどうしたものかと思案した。
「貞操はともかく……リークには少し頑張ってもらわないといけないけれど、もう一度フレディオス王と話してみてもらえないかしら」
「……え」

 リークがあからさまに嫌な顔をした。
 マリアは相手を制するように片手を振る。
「私達は、最初に王の提示した条件……キラータイガーに勝利する、というものをクリアした。なのに勝手な彼の一存でそれを反故に出来るのかどうか、を確認して欲しいの。ルプガナでの船の時とはわけが違うわ。相手の条件を飲めないからといって、断るわけにはいかない。紋章はどうしたって必要だもの……王の回答が私たちの意にそぐわないものだとしたら、それはそれでまた対策を考えなくてはいけないでしょうし」

「それってさ、……ギリギリまで王に色気で迫るって作戦でいいのかな? ……男と男で色気も何もないもんだけど」
 ぼくは疑問を含めて自分の思ったことを言ってみる。
 が。
 急に顔色を悪くしたぼくにリークが不思議そうに覗き込んできた。
「どうした、カイン」
「……いや。君とフレッド王のそういうシーンを想像したら……むしろ君が色気で迫ってるところ想像したらものすごく気持ち悪くなっちゃってさ……。さっきはぼくが悪かった。世の中に美しくない物をこれ以上増やさないでくれ……」
「言い回しとしては若干引っ掛かるが」
 カインもようやくわかってくれた……なんてぶつぶつ呟きながら、リークは安堵した顔になった。
 でも、確かにマリアの言うとおりだ。
 もう一度リークが王様に会うしかない……んだろうなやっぱり。

「前王に……どうなっているのか、聞くわけにはいかないのか」
「前王様はだめだよ。自分の子供にメロメロだもの、知ってるだろ? それに……」
 リークの提案を遮るとぼくは今日の試合中のことを思い出した。
 前王に耳打ちしていたフレッド。
 こうなることを予測していたんじゃないか?
 もしそうだとすると先手を打たれている、前王に当たっても無駄だろう。

「リークが逃げてきた時点で前王様に手を回してるに決まってる」
「それは、確かに……その通りだろう、な」
 大きくため息をつくとリークは憔悴しきった目でぼくらを見た。
「わかった……。もう一度行ってくる…………」
 あまりにも哀れな様子の彼に、マリアが近寄ってそっとリークの右手を両手で包み込む。
「……貴方に何があっても、私たちは貴方の友達よ」

 その途端にぼくが
「あはははははは、あははははははははははははははは! 頼むよマリア、万が一でもそんなことあるとか考えないでくれ!! あはははははははははは!!!!」
 と笑うと、リークはぼくを殺意の篭もった瞳で睨みつけてきた。

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□モドル□


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