昨日やってきたコロシアムだ。
 観客の歓声は昨日以上に上がってる。
 何しろいつものキラータイガー相手じゃない、人間同士の戦いだ。
 しかも片方は自国最強の王、もう片方は他国最強の王子。
 王族同士の最強の戦いなどめったに見られるものじゃないんだろう。

「この国の人たちってほんと戦いが好きなんだね……」
 乾いた笑いを洩らしながら賓客席に通されたぼくとマリアは、出窓から外の様子を眺めた。

 少し高い位置に作られていて、会場が見やすく出来ている。
「魔法でのズルは出来ないようになっているみたいね」
 マリアは部屋を見渡しながら呟いた。
 部屋の四方に小さな魔法陣が描かれており、部屋の中が結界の状態になっている。
 あの魔法陣はマホトーンの呪法を描いたものだ。

「……もしリークが負けたら、私が出ます」
 唐突なマリアの言葉にぼくは目を丸くした。
「……は? え?」
「剣対魔法が禁じられているわけではないでしょう? ラリホーで動きを封じて、マヌーサをかけてルカナンで防御を減らして……。それから攻撃魔法をかけたり叩いたりすれば私でも勝てるんじゃないかしら、なんて……」

 マリアの楽観的なセリフにぼくはぶるぶると首を振る。
「ま、待った待った。君は例えば、一対一でリークと戦ったとして彼をその方法で倒せると思う?」
「……無理かしら」

 顎に手を当ててうーん、と悩む彼女にぼくは大きくため息を洩らした。
「ラリホーは永遠にかかってるわけじゃないし、耐性が強ければかからないこともある。マヌーサをかけても天性の勘で幻影を打ち破って来る。ルカナンで防御を減らしても元々の防御が高いからあまり効果がない。そもそも元の体力が化け物並みだからね……、フレッド王はそのリークと同程度だと考えた方がいいと思うよ」

「……それは強敵ね。いっそあの二人でハーゴンを倒しに行ってもらったらすぐに世界は平和になるのじゃないかしら」
 マリアの諦め交じりの言葉にぼくは苦笑いしながら「確かに、ね」と頷き会場を見下ろした。



「戦う前に、試合が終わった際の互いの条件を先に確認しておこう。その方が張り合いも出るだろう」
 向かい合っている時にフレディオスが提案してきた言葉に僕は首を傾げた。

 条件などわかりきっていることではなかろうか。
 僕が勝てば紋章と鎧を貰い受け、彼が勝てば一晩抱かれる。

 それで話がついていたのではないか、それとも何か変わったのだろうか。
「……私からは昨日申し上げた通りです。要求は、紋章と鎧。貴方は?」

 うん、と頷くと王は僕が耳を疑うようなことを口にした。
「俺が勝てば、君は一生我が国の奴隷となってもらう」
「……、…………は?」

 思わず口をあんぐりと開けてしまった。
 呆けている僕を見てさもおかしそうに笑うとフレディオスは続けた。
「更に条件をつけさせてもらおう。アシュカイナ王子とローズマリー王女、彼らも奴隷として我が国で働いてもらう。……ああ、君は俺に負けたとしても強者なのには変わりない、特別待遇で扱わせてもらうよ。例えば毎晩俺の夜伽をしてもらうとかね」

「な、ちょっと、待った」
 思わず身を乗り出して掴みかかりそうになってしまった。
 何故そんな条件が付加されているのか。
「おや? 君は俺に勝つ自信があるんだろう? ……昨日確かに君は負ければ何でも言うことを聞くといったね。それに紋章が手に入らなければ旅がここで終わってしまうとも言った。ならば、奴隷としてここで一生過ごしても同じなんじゃないのかね」
「……それは」

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□モドル□


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