リークは押し黙ると、ぼくをゆっくりと抱きしめた。
 それから肩口に顔を埋めてくる。
「……カイン。僕はほかの人は好きにならない」
 呟くようにいうその言葉、口調、それに思い切り胸が高鳴ったぼくは、これ以上感情を抑えるのは無理だと思った。
 肩口にもたれているリークをそっと離すと、そのままベッドに倒してやる。
 一瞬状況が飲み込めなかったようで、リークは目をしばたかせていた。
 が。

 ぼくの唇が首筋に当たった時点でようやっと何をされているのか気づいたみたいだった。
「……カイン、待った。それは」
 ぼくの顔を押しのけると両手でバツを作るリーク。
 ここまできてお預けとかありえないから。
 そっちから誘っておいてなんだ。
 ぼくは思い切りむっとして見せると、バツを作っている相手の両手首を掴んでベッドに押さえつけた。

 リークの力ならこのくらい簡単に払えるはずだ。
 でも、彼は払わない。
 OKって意味なのかなと思って頬に口づけた時。
 リークが、何とも言えない複雑な表情でぼくを見ているのに気づいた。

「……なんだよ。据え膳出しておいてお預け的な展開なら聞かないよぼくは」
「カインは、それで、いいのか?」

 問われて何を言いたいのかと思い手を止めてみる。
 リークは続けた。
「こんな、勢いだけで……。……僕は最近諦めの境地になってきた。だからお前が僕を抱きたいというなら従うし、お前が抱かせてくれるというなら喜んでそうさせてもらう。だけれど……もう少し状況というべきか、なんというか……」
「やなんだよ、……」

 リークがぽつぽつしゃべるのを遮ってぼくは言った。
「ぼくが一日遅れると、その分誰かと何かあるんじゃないかって不安で不安で仕方がないんだ……。今日しそびれたら、明日リークは誰かそういうことになるかも知れない。明日出来なかった、そうしたら明後日……って。早く君をぼくのものにして安心したいんだよ……」
「僕は……それが、嫌なんだ」

 顔を上げると眉尻を下げたリークの顔。
「それが嫌? って?」
「お前は自分で気づいているかわからないけれど……人望もあって人づきあいもよくて、たくさんの人に好かれる性格だ。……安心させてしまったら、もう僕からは興味を失ってどこかへ行ってしまいそうなんだ……」
「そんなこと」
「ないとは言い切れない」

 そこでようやくリークはぼくの手を払いのけて起き上がる。
「……カインのことを好きになったのは僕の方からだ。だから、カインが僕の気持ちを受け入れてくれたことが今でも信じられない。……いつかそれこそ『運命の相手』が現れたらそいつに奪われてしまうのではないかと、……こんな、弱気なことを口にするのはらしくないからあまりいいたくなかったのだけれど」

 しょんぼりしながらそう語るリークの顔に胸の昂揚を感じる。
 ああもう、なんで。
 ……なんでこの力馬鹿の王子様を可愛いと思っちゃうんだぼくは。
 やばいなーと自分でも思う。
 どっぷりハマっちゃってて抜けられない、そんな表現が一番合ってると思った。

「ぼくの運命の相手はリークだよ、それ以外考えられない。……だってさ考えてみてよ。ぼく元々ノーマルなんだよ。それなのに全部すっとばして君の事好きになっちゃって。……ありえないよ、ぼくの方こそ他の人を好きになることなんてありえない。ぼくは君が大事だ、大好きだ。だから、……変なこと心配しなくて、いいから」
 ぼくの言葉にリークは微笑むとぼくを抱きしめた。
 その行為に思わずぼくは小さく笑う。

 ……が。
 ここで油断したのが間違いだったというべきか、……次の彼の行動に思考が停止した。

次へ



□モドル□


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