気がつくと、天井を見ていた。
 仰向けにされているのに気づいたのはそれから数秒してからだった。
 耳に口付けられてぼくは目をぱちくりとさせてから相手に顔を向けた。

 それから、抑えられている両手首。
「あ、ああああああ、あの、リークさん?」
 わざととぼけてたずねるとリークはにやっと笑って片手だけを解放し、ぼくの頬を撫でる。
「カインがどうしてもしたがってるみたいだから、じゃあいいんだろうと思って。据え膳出しておいてお預けっていうのはだめだといったのは誰だった?」
 いたずらっぽい瞳を浮かべて笑う相手にぼくはため息を漏らした。
「……ぼくが上っていうことで君との関係は決定してたと思ってたのに……」
「勝手に決めるな。僕だって男なんだ。好きな相手は抱きたい」

 ううう、どうしようどうしよう。
 ぼくだって彼と同じだ、好きで好きでどうしようもないから……別に立場はどっちだって構わない。
 ん、だけど、……出来たら先にぼくが抱いてから、がいいかな、なんて思ったり思わなかったり、その。

 ぼくがもじもじして迷っていると。
 突然リークが、ぼくに思い切り倒れこんできた。
「な、ななな、どうした!?」
 ようく見てみると、寝息を立てている。
 寝てしまった。
「……は? なに?」

「明日試合なのでしょう?」
 明かりをつけて、呆れた声を上げてマリアが入ってきた。
 そうか、今のはマリアのラリホーだ。
「無駄な体力を消耗している場合ではないのに、まったくもう」
「マリア、……まさか、見て」

 ぼくに問われてマリアは視線を逸らす。
「ごめん……やりづらい、よな。パーティの二人がこういうことしてたら」
 それを聞いて彼女はすぐにぼくに視線を戻した。
「……気づいていたけれど、リークの自由にさせてあげようと思っていて。リークは少し世捨て人みたいなところがあるから……誰かを愛することで世界を守る、ハーゴンを倒す原動力になってくれればそれで良い、と思ったの」
 少し困ったように眉を下げて微笑するマリア。
 どういう心境なのか、ぼくには図りづらかった。

 ぼくはリークを自分の上から退かせると、ベッドに横たえさせて掛け布団をかけてやる。
 それからマリアを見た。

「リークは、……ぼくとマリア、どちらを選ぶか迷ってるみたいだ」
 マリアは無言で聞いている。
 ぼくは続けた。
「たぶん旅が終わるまで保留するつもりなんだろうね。……3人で旅をするに当たってこれが吉と出るか凶と出るかはわからないけど、ぼくはそれでいいと思ってる。ただ少し違うのは、ぼくにはこういう肉欲的な感情をぶつけてくるけど君にはそうしない、……本当に大切で守りたいって感じだ。そういう面でぼくは君に負けてる、んだと思う」
 ぼくの語りにマリアが首を傾げる。
「本当に好きだからこそ抱かない、という心理、と言いたいの?」

 頷いて見せるとマリアは寂しそうに眉を下げた。
「リークの私への感情というのが、私には良くわからないの……。……正しておきたいのだけれど、私はリークに恋愛感情は抱いていないわ。彼もそうなのではないかしら」
「……え」

 思わずぽかんとして彼女の顔を見てしまう。
 どういうこと?
 過去の行動を見てても明らかにマリアは、リークを、……?
「私、……リークは大切な人よ。大切な仲間。親友。だけれど、それ以上ではない……。だから、……私に遠慮はしないで。そんなことを気にされても私も困ってしまうから」
 微笑みながらそういうと、彼女は踵を返して自分の部屋に戻ろうとした。
 ぼくはあわててベッドから降り、彼女の肩を掴む。

「嘘だマリア! 君はあいつのこと」
 マリアは顔だけをぼくに向けた。
 辛そうに歪む瞳。
「……わからないの。もしそうだとしても、私には……大切な方がいらっしゃる、いつまでも私の心から消えない人が。それとリークへの感情が同じだとは私には思えない。だからこれは恋愛ではないの」

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□モドル□


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