フレッド王にリークが夜の誘いを掛けられたと聞いた時、表面では大笑いしてたけど気が気じゃなかった。
 いや、その気持ちを押し殺すために、押し隠すために大笑いしてたのに過ぎない。
 マリアがもう一度行ってくれと頼んだ時も、本当はついて行きたくて仕方なかった。

「……ぼくも行ったほうがいいんじゃ」
 心配そうな顔をするぼくにリークはおかしそうに笑う。
「いざとなったら力づくで逃げてくるからそんなに、雨に濡れた捨て犬みたいな顔しなくていい」
 そう笑いながらぼくの頭を撫でる。
 撫でる手が心地がいい。
 それと同時に、これからリークが会いにいく相手のことを想像するとぞっとした。

 相手も腕に覚えのある戦士で、しかも体格はリークよりずいぶんいい。
 力任せに無理やり組み敷くことも考えられる。
 背も高いし歳も上だ。
 おまけに顔も悪くなくて、そして何よりこの……この! 世間知らずのおぼっちゃん、ですよ!
 何しろぼくへの気持ちに気づいたのもぼくがからかったせいという前科があるこいつだ、フレッド王に迫られてその気になっちゃってそのまま抱かれる可能性は決してゼロじゃあ、ないのだ。

 ……それに関してはまあ、人のことは言えないんだけど。

 さておき、もしもそんなことになったら。
 ぼくの心は嫉妬で狂いそうになっている。
 リークを笑顔で見送り必死にそれを抑えると落ち着こうと思って風呂に入った。

 身体を洗いながら考えるのはリークのことばかりだ。
 今頃何をしてるんだろう。
 もう帰ってきてもいいんじゃない? なんて、出て行ってまだ20分も経ってないのにもうそんなことを考える。
 今頃抱きしめられてるんじゃないだろうか。
 でもってキスされてたりしてないだろうか。

 それだけならまだいい。
 紋章を盾にしてベッドに組み敷かれてたりしないだろうか────。

 嫌だ、嫌だ、嫌だ。
 ぼくはざぶざぶとお湯で顔を洗うといても立っても居られなくなって風呂から上がった。
 やっぱり付いていけばよかった。
 そればかりが頭をめぐる。
 と、そこへリークが戻ってきてものすごい形相で剣を磨き始めた。

 とりあえずこの短時間で戻ったってことは何もされてないみたいだ、良かった。
 ほうっとひそかに安堵して、ぼくは何があったのかを問う。
 明日の試合の話を聞いているとマリアが部屋へやってきた。



 そうして、夜。
 素振りを終えたリークが部屋に戻ってきた。
「お疲れ」
 ぼくは本を読みながら彼を待っていた。
 リークがあれ、と目を丸くする。
「もう眠ったと思っていた」
「君の事待ってたから。……落ち着かなくて」

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□モドル□


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