公女がどう出るだろうと見守っていると。
「証明は……申し訳ないが出来ない。唯一考えられる手段があるとすれば……私自身が兄に闘技を申し込み、その勝利条件でレイカーリス王子の解放を望む。そのくらいだろう。……兄には恐らく負けないはずだ」
「そう、言われても」

 マリアは困ったように眉を寄せた。
 ぼくは二人の間に割って入る。
「ぼく、公女は信用していいと思う」
「カイン」

 マリアは驚いてぼくを見るけれど、ぼくはそのまま続けた。
「ぼくらを陥れるためならもっと堂々と姿を現してにこにこしながら、……申し訳ないけどそれこそフレッド王のように接触してくるんじゃないかと思ったんだ。顔こそ似てるけど……ミレディ公女は王とは考え方がまるで違う気がする。それは戦いに熱狂するここの国民達と温度差があることから考えても」
 ぼくに言われてマリアは、うう、と小さく唸ってから自信なさげにミレディを見た。
 ミレディは、ふ、と笑うとぼくの頭をそっと撫でてくる。
「ありがとう。その信頼を裏切らない働きはするつもりだ」

 その撫でてくる感触が……なぜだか、リークに撫でられた時の感触を思い起こさせた。

「……わかりました。カインがそこまでいうのなら、きっと信用に値するお方なのでしょう。でも……失礼ですが、貴女の行動については不審を前提に考えさせて頂きますので、そこはご了承を」
 マリアが怖い。

 そりゃそうだ、リークをとんでもない目に合わせた相手の妹。
 そっくりな顔。
 信じろって言われてそうそう信じられるはずもない、のに。
 ぼくはどうして彼女を信用してみようと思ったのか……自分が、よくわからない。

 ミレディは頷くと、脇の建物にあった扉を指し示した。
「計画が漏れてはまずい。そこに入ろう」

 ぼくらは促されるままそこに入る。
 まだ罠じゃないかときょろきょろするマリアの手を引きながら入ると、そこは使われていない倉庫のようだった。
「ここは」
「私が一人になりたい時に利用する場所だ……兄の息はかかっていない」

 そういうと、部屋の中央辺りに立って「さて」とぼくらを見る。
「貴方達の計画を聞く前に私が考えていたことを話そう。それから、貴方達が乗るかどうか決めてもらって構わない。乗ることにしたのなら貴方達の計画を聞かせてもらう」
 ぼくらはうん、と頷くとなんとなく姿勢を正した。

「では……。……私の考えとしては先ほど述べたように、私が兄と対峙して実力行使に出ることが一つ。もう一つとして……偽名で闘士として登録し、レイカーリス王子との対戦になる時を狙う。王子に当たるまで勝ちぬく自信はある」
「狙っても……あの高い塀に囲まれた状況で何を成すのですか?」

 マリアの質問は公女は頷いた。
「そこで貴女達の出番だ。確かカイン王子は移動の術式を紡げると思ったが」
「あ、はい、できます。ルーラのことですよね」

 なぜ彼女がそれを知っているんだろう。
 それを尋ねようと思ったけどひとまず全部の話が終わってからにしようと思った。
「少しタイミングが難しいと思うのだが……私は試合時間を出来るだけ引き延ばすから、ローズマリー王女と共に、カイン王子に客席から闘技場に飛び込んでもらう。そして地面に叩きつけられる前に、レイカーリス王子と共に移動の呪法で逃げる」

 ぼくは公女の提案にぽかん、と口を開けてしまった。
 マリアもまったく同じみたいだった。
 ぼくらの唖然とした様子にミレディ公女は首を傾げる。
「……難しいか、この方法では」
「いえ、その」

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□モドル□


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