「命を捧げる誓いは異性が相手でなくては成立しない。だから貴女相手には残念ながら同様の誓いは立てられないが……。……信用して欲しい。すべて話そう、貴女のおっしゃる通り……私はこの国へやってきてからの貴女達の動向をずっと観察させてもらっていた。兄を打倒したい。その協力者となってくれる相手をずっと旅人の中から探していた。……そうして、貴女達こそがそれに適う人材だと判断した。それから貴女達について、早急に調べさせてもらった。明言しておくが……カイン王子のことだけではない。ローズマリー王女、貴女のこともレイカーリス王子のこともずいぶん調べさせてもらっている。……カイン王子に愛を誓ったのは、そこまでしなければ貴女達が……いや、貴女が信用してくれないと思ったから」

「そんな、都合のいい……」
 抱き締められたまま、それでも弱々しい口調のマリア。
「お兄様の打倒の為に……自分の今後の愛を捨ててもいいとおっしゃるのですか?」
 見上げながら尋ねるマリアに、公女は首を横に振った。

「いくらなんでも私も戦闘マシンではないから。……カイン王子は、私を一目で信用してくれた。それだけで……愛と命を捧げるに値すると、私の方も判断したまで、です」
「でも」

 マリアは更に声を上げながらぼくに目配せしてきた。
 貴方はどうなの、どうするの、と言いたいのが手にとるようにわかる。
 そうか、マリアは知ってる。
 ぼくはリークのことを好きなわけだから、公女の愛を受け入れるわけにいかないって。
 それに彼女はぼくをまるで大切な兄弟のように今まで扱ってくれていた。

 たぶんいわゆる小姑みたいな気持ちになってるのかな、なんて勘ぐってしまう。
 ……そんなこといったらマリアに失礼かな。

 でも、だけど。
 ぼくは……リークが好きだけど、マリアのことも大好きだ。
 ぼくは出来ればずっとずっと、3人で一緒に居たい。
 それぞれが王国の後継者だし、その上マリアはこれから国を復興させなきゃいけないからずっと、なんて無理なのはわかってる。だけど。

 できるだけギリギリまで3人で居られたら、っていうのが……ぼくの今の一番の望みだ。

「……わかりましたミレディ公女。貴女のその誓いに懸けて、ぼくも貴女を信じます」
 ぼくの言葉を聞いて公女は本当に嬉しそうな顔をした。

 なんだろう、何かに似てる。
 いや、誰かに似てる。
 ……そうか、リークに……リークに似てるんだ。
 撫でる手の暖かさ。
 冷たいようでいて暖かい笑顔。

 ぼくは、ちょっと困ったな、と思った。

 どうもぼくの面倒見たがりの性質上、こういうタイプに弱い気がする。
 じゃあぼくがリークに惹かれた理由ってそれだったのか?
 どうなんだろう。
 わからない。

 ……ちょっと似たようなタイプに出会っただけで心が揺らぐとかどうかしてる。
 リークのこと言えないじゃないか……。

 ぼくは自分で自分の両頬をぺちぺちと叩いてみた。
 マリアは訝しげな顔でこっちを見ているけれど、ぼくはなるべく目線を合わせないようにして改めて公女を見た。

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□モドル□


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