「とりあえず……交渉? っていうのかな、それは成立しました、ってことでいいでしょうか」
 公女が頷くのを確認するとぼくは言葉を続ける。
「えっと……順序としては、まず公女が闘士としての登録をする。で闘技が開催されて、リークと公女が当たるプログラムになるまで待つ。それから、ええと……」
「挑戦者には前日までに対戦の時刻と対戦相手が知らされる、……貴方達のように飛び入りの場合はその限りではないが」
 公女に言われてぼくらは頷いた。
 飛び入りでキラータイガーと戦わされたぼく達は、プログラムも何も無くいきなりその場で、だった。

「今日これから登録をして……明日に試合の予定が組まれているならば今夜にでも知らせが来るだろう。もし明日の試合がなければ、もしくはレイカーリス王子が明日の出番でなければ、計画は明後日以降になる」
「そういうことになりますね……」

 マリアが少しだけ沈んだ顔をした。
 気持ちはわかる。
 一刻も早く実行したい……明日どころか、今すぐにでもって気持ちなんだ。
 ぼくだって同じだ。

 ぼくはマリアの肩を軽く叩くと、公女に向き直った。
「よろしくお願いします。ぼくらは一旦ホテルに戻りますから、動きがあればお知らせいただけますか?」
「承知した」

 ぼくらと公女はバラバラに、その倉庫のような場所を後にした。
 後は連絡をもらうまでぼくらに出来ることは無い。
 いや、ぼくは一つだけやっとかなきゃいけないことがある。

「……思うんだけどさ。ルーラを唱えるのとキメラの翼を使うのと、どっちが早いと思う?」
 ホテルへの道すがら、マリアに尋ねてみた。
「それは……」
 問われてマリアは少し考える仕草を取る。

 キメラの翼なら詠唱の必要がない分、同じ効果を素早く発動させることが出来る……それは以前ラダトームで似たようなことがあった時に思ったことだ。
 だけどマリアは首を横に振った。

「……魔法陣を先に羊皮紙に描いておいて術式を発動させる方が早い……気がするわ。キメラの翼って結構嵩張るでしょう、わざわざ手にしているのを王や兵士に見られてしまったら……ただでさえ、すぐにデルコンダルを発つと約束していたはずなのにまだ留まっているのだから……計画が彼に知られてしまいそうな気がするの」
「かといって使う場面で袋から出す時にうっかり手間取ったら命取りだもんね。了解。……頑張って呪文詠唱を素早くできるように今夜練習するよ」
マリアは小さく笑うと頷いた。

 その夜……明日の午前中の試合、さっそく第一試合でリークと当たった事を、公女の部下がお忍びで知らせにきてくれた──。






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□モドル□


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