触れられている場所に熱が集まる。
 罵倒したいのに、……それとは別の声が出そうになる。
「ふ、……、ぁ、……」
 それでもどうにか声を殺そうと唇を噛んだ。
「声を出せばいいのに。苦しいだろう?」
 言いながら僕の耳をゆっくりと舐める。
 舌が這う感触は、まるで大きななめくじが這っているようだ。
「……、っ」
 ぶる、と肩が震えた。

 頭がくらくらとする。
 我慢、しないと。
 こんな奴に触れられて、たとえどんな感覚を覚えたとしても……これは拷問と同じだ。
 終わるまで感覚を殺して耐え切ればいい。
 そう考え、僕は目を閉じて、暴れるのをやめた。

 もうどうしたって逃れられないことだけはわかった。
 それなら、せめて出来るだけ意識を別に向けよう。
 今されていることを考えないようにしよう……。

 僕が大人しくなった様子にフレディオスは怪訝そうな顔をした。
 が、すぐに何か考え付いた顔になる。
「我慢なんか出来ないさ。……初めてなんだろう? 女の経験があるようには見えないしな。呼んでみなよサマルトリアの王子の名前を。助けて、って言ってみればいいじゃないか。どうして呼ばない?」

 その言葉に僕の頭にカッと血が上るのがわかった。
 なぜ、どうして、どうして僕とカインのことを知っている。
 僕は目を開けて相手を睨みながら尋ねた。
「……どうしてカインのことを」

「今朝彼が来たよ。……もしリークが負けたら、自分を好きにしていいからリークには手を出すなって。それでピンと来た、君たちはそういう関係なんだってね」
「……あいつ」

 唇を噛む。
 僕に黙って何を勝手なことをしているんだ……。
「……それで、どうしたんだ」
「好きにしていいというから彼の望み通りにしたさ」

 どくん、と心臓が跳ねる。
 どういう意味だろう、まさか、まさか、まさか。
 僕が意識を無くしている間に。
「もし、……僕の予想通りのことをしたなら、僕は……貴様を殺す」
 これ以上無いくらいに僕の中の何かが込み上げて来るのがわかる。
 もし想像した通りだったら、絶対に、絶対に許すわけには行かない。

「その顔、いいね」
 フレディオスはぺろりと自分の唇を舐めると親指で僕の唇をなぞった。
 僕は顔を逸らすと、腕に少し力を込めてみた。
 いいぞ。段々毒が抜けてきている。
 もう少し、何か会話で引き伸ばそう、そうして……腕を縛っているこれを千切ってこいつに飛び掛かって殴り倒す、そのまま殴り殺してやる。
 国交だとかそんなことはもうどうでもいい。
 ハーゴンと手を結ぶような、そして僕の大事なあいつに手を出すこいつが僕は何よりも許せない。
 全面戦争になるというなら受け立ってやる。

「もう一度聞く、……カインに何をした」
 僕の問いに奴はにやりと笑む。
「……答える前に口づけをさせてくれないか。それを大人しく受け入れてくれれば、君の質問に正しく答える」
「……」

 嫌だったが。
 一度くらいならもう、何度もされていることだし諦めが付いた。
 一体どんな回答が来るのか。
 やつの言葉が僕を動揺させるためだけのただのハッタリで、カインが何もされていないならいい。
 だからといってこの男を許すわけではないが、ひとつ不安の種が減るのは間違いがない。
 もし手を出していたら、……その怒りを原動力にして一気に掴みかかろう。

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□モドル□


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