僕が頷くと、フレディオスは傍のテーブルに置いてあったウイスキーの瓶を手に取り、グラスにも入れずに口に含む。
 それから口移しで僕に飲ませた。
 飲み慣れないアルコールの強さに咳き込んでしまう。
 式典で手にすることはあっても実際はあまり飲まずにそのままにしておくことが多く、酒には慣れていなかった。

「けほ、……」
 むせてから見上げるとまた厭らしい笑みを浮かべている。
 つくづく理解しがたい男だ。
「約束だろう、答えろ」
 奴は、ふ、と口の端で笑うとようやっと僕の質問に答えた。

「抱いたよ。細いな彼の身体は、君に比べてずいぶんと華奢だ。まるで女を抱いているみたいだったよ」
「……、……」

 ある意味では予想していたが、それを直接耳にしてしまうと背中に稲妻が走ったような感覚に襲われた。
 絶望的な……言葉。

 僕が負けたから、そうなった?
 いや、こいつのせいだ、こいつが卑怯な……
 いや、僕がそもそもあんな勝負を持ちかけずに最初に素直に抱かれていれば良かった……?
 僕の、せい?

 呆然とする僕に、フレディオスは更に続ける。
「可愛い声で鳴いてたな……、最初は拒んでいたけど約束だってことでそのうち大人しくなって……最後には気持ちよさに善がって喘いでたよ。そうそう、ローズマリー王女も頂こうと思ったんだけどね……デザートは後で。まずはメインディッシュの君だ」
 だめだ、それ以上話すな、聞かせるな。
 僕は首を横に振る、何度も何度も。
 カインが僕以外の奴に、……。

 マリアは手を出されていないのが唯一の救いだった。
 けれど、わざわざそんなことを申告してくることで益々カインへの行為の信憑性が増す……。
 僕は知らず知らず、涙を零していた。
「ふざけ、るな……、カインを、……カインを!!」
 今しかないと思った。

 手首の戒めを引き千切ろうと思い切り力を、……込めようとして。
 おかしい、先ほどと感覚が違う。
 力が、入らない。
 ぼくが手首の戒めを解こうと力を入れているのに気づきフレディオスが口の端をゆがめた。
「そろそろ毒が切れるだろうと思って別の薬を入れたよ。……まったく君はつくづく愚かだな。そこもまた可愛いけれど」
「……あ、……」

 あのウイスキー、あれか。
 アルコールが入っているから短時間で身体に回ったのだ。

 どうにも、ならない。
 カインを救えなかった。
 そして今、自分すら救えない。
 最悪。
 絶望。
 それしか、見えない……。

「嫌だ、カイン、カイン……カイン、……」
 こんなに泣いたのは前はいつだったか。
 思い出せないくらい、僕の感情は長らく閉ざされていたのだと思う。
 今はただ、涙が止まらない、次から次へと溢れて……いつもの強がりも何もかも消え失せていた。
「……カイン、助け、て、くれ……」
 助けを、求めた。
 この状況を助けてほしいわけじゃない。

 どうしたらいいかわからない、壊れかけた今の心を助けて欲しかった。
「……助けは来ない。君は一生俺の物だ。諦めるといい」
「嫌だ、貴様の物になんて絶対になるものか!」
 首を横に振る。泣きながら。
 奴は僕の頭を押さえ込むと、親指で涙を拭う。
 それからやや強引に口付けると舌を侵入させてきた。

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□モドル□


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