「なんなんだよあいつ、信じられない!!」
 ホテルに戻って部屋に入った途端がなり立てるぼくを横目にマリアは何やら考え込んでいた。
 ぼくの怒りに彼女が反応してくれないので少しだけ意気が下がってしまってぼくは黙り込む。
 何を思案しているんだろう。
 いくら待っても口を開かない彼女にぼくは堪りかねて、言った。
「仕方ない、今度はぼくが出る。ぼくがフレッドに勝ってやる」
「……貴方、昨日自分で私に言ったことを忘れたの?」

 僕がそう言ってやっとマリアは口を開いた。
 けど、批判的な内容だ。
「昨日言ったこと……」
「彼はリークと同程度の強さだ、私達で敵うはずがないと。その上リークをあのように陥れる卑怯な手段を使う人物だもの、私達に万が一にも勝算はないわ」
「……」
 もっともな意見に詰まってしまう。
「……でも、だったらどうするの。リークを奪われたまま? 紋章だけもらってぼくら二人で旅を続ける?」
 僕の言葉にマリアは、うーん、と唸った。
 それから。

「……紋章を貰いましょう」
「え……」
 思わぬ言葉に目をパチクリさせてしまった。
「ま、待ってよリークは置いて行くの!?」
「いいえ、リークも助けます」

 妙案が浮かんだと言わんばかりに、マリアは極上の笑顔を浮かべた。



「昨日貴方のおっしゃったことに従いたいと存じます。貴方のおっしゃる通り、国法は国法。レイカーリスはそれに従ったまで。……陛下の寛大なる措置に感謝し、紋章を謹んで頂戴いたしたく存じます」
「一晩経って頭が冷えたとみたね」

 にやにやと本当に厭な笑みを浮かべながら、マリアの申し出をフレッドが聞いていた。
「……もしごねるようなら別の案を提供しようと思ったが」
「別の案?」
 気になって思わず尋ねてしまう。
「リーク王子の身代わりにどちらかが王宮に入るという案ではどうかな、と思ってね」

 ぼくは息を飲んだ。
 実は、それはゆうべ少し考えていたのだ。
 だけどぼくなんかでリークの身代わりになるかどうか、相手が満足するかどうかわからないので保留にしていた案だった。

「ご冗談を。そのように謀って全員を留め置き、それを人質としてロト三国の領土を属国に入れる算段なのではありませんか?」
 マリアがかなりきつい調子でいった。
 どうも彼女は敵とみなした相手には容赦がない性格らしいとようやく知る。
 今までの優しくて強いけれどどこかもろい彼女しか知らなかったぼくは、感心のあまりほうっと息を洩らした。
 フレッドはマリアを一度睨みつけた。
 が、すぐに視線を外して軽く笑う。

「女がそのようにきつい性格では可愛いげがありませんよ、ローズマリー」
 立ちあがり、マリアに歩み寄って来る。
 なんとなく嫌な予感がしたぼくは二人に一歩近寄り、さらにいつでも動けるように臨戦態勢をとった。
「……リークは貴女のそういう気の強いところがお好きなのかな?」
「レイカーリスがどう考えているかは関係ないでしょう、今の話には」
 あからさまにマリアがむっとするがフレッドはそれを気にせず、彼女の頬に触れる。

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□モドル□


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