目を覚ますと見覚えのある部屋だった。
 起き上がって思い出そうと頭を振る。
 そうだ、ここは昨日訪ねたフレディオスの部屋だ。
 ここに運ばれたということは恐らくフレディオス本人か……その家来辺りが僕を連れてきたんだろう。

 試合終了直前に突然意識を失ったことだけは覚えている。
 ……負けた、のか。
 それにしてもなぜ。
 王から一瞬目を離した瞬間に突然意識が途切れた。

 だがこの感覚は覚えがある、……以前海で毒を持つ魔物に刺されて意識を失った時と似た感覚だ。
 おそらく誰か、王の配下が毒矢の用意をしており、僕が勝ちそうだったのでそういう卑怯な手段を取ったんだろう。
 そう考えてから首の後ろに触れるとちくりと痛む部分があった。
 つまり、何もかも向こうに読まれていたということだ。
「僕が試合を提案することも想定済みで、罠に掛けられたということか……」
「そういうことさ」

 声がして振り向くとフレディオスが隣の部屋から入ってきていた。
 僕は警戒し、軽く身構える形となる。
 睨みつけているとフレディオスは笑いながら言った。
「敗者は勝者に従う。これは我が国に限らず、全世界共通の掟だ。約束を果たしてもらおうか」
「……その前にカインとマリアはどうした」

 僕が負ければ二人も奴隷にするといっていた、彼らは今どうしているだろう。
 だが彼の口から出た回答に、僕は驚きを隠せなかった。
「まだ処遇は決めていないが……二人とも見目は悪くない、俺の後宮にでも入ってもらおうかと思っている。もちろん必要とあらば闘技場に出てもらうがね。そこで負ける様ならそのまま死んでもらう。弱い人間は俺には必要ない」
「馬鹿なことをほざくな! 二人を解放しろ!」

 いきり立って掴みかかろうとベッドから降り……ようとした。
 しかし、力が入らず音を立ててベッドからずり落ちてしまう。
「なん、だ、これ、は」
 唸りながら起き上がろうとするが力が入らない。

 フレディオスが近寄ってきて僕の腕を強く掴んだ。
 掴まれたところが痛い。
 そのまま強引に起こされると、フレディオスは厭味な笑みを浮かべて顔を近づけてきた。
「しびれくらげの毒を少量盛っただけだ。命に別状はない。……マグロとするのは嫌なんでね、起きるまで待っていたんだが」
「ふざけ、るな…!」

 畜生、心底腹が立つ、そしておぞましい。
 こんな男の策略に乗ることになるなんて……。
 殴りかかるが元々力が均衡していた相手だ、毒の痺れのせいで弱っていた僕の拳はあっけなく止められた。

「くっ……」
「君もこれからは奴隷剣士としてコロシアムで活躍してもらおうと思っている。そして夜は俺の夜伽の相手だ、俺が飽きるまで働いてくれたまえ」
 完全に勝ち誇った笑みを浮かべるとフレディオスは僕の顔を引き寄せて、そのまま唇を重ねた。
 背中をぞわぞわとまるで虫が這うような不快感が走る。
 押しのけようと相手の胸を押すが、その手も掴まれて抑え込まれてしまった。

 舌を差し出してきたので入れられてなるものかと唇を固く結んでいると、フレディオスは顔を離して溜息を洩らした。
「往生際が悪いな。……どうもわかってないようだから教えて差し上げるが。なぜ君が負ければ二人の身柄も一緒に押さえると言ったと思う?」
「……人質、のつもりか」

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□モドル□


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