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 恋愛とかそういうのに興味はないってよく城の仕官や兵士達と笑ってたもんだよ。
 時々シアに心配されたりもしたんだ。
 お兄ちゃんってもうそういうお年頃なのに一生結婚とかしないつもり!? って。
 別にそういうつもりはないけど、晩婚にはなるかもな、なんて思ったりもした。

 城には可愛い女の子がたくさんいて、みんな優しくしてくれて(それはぼくが王子だからという理由に他ならないんだけど)正直選び放題って言うのはこういうのなんだろうなと思うし、だけどそれでも、……それでも、ぼくは女の子に恋愛感情を持つことはなかった。

 念のため言っておくよ。
 別に女の子に「興味が無い」わけじゃないんだ。
 男にしか欲情しないとかそういうのでもない。
 城で行われる式典なんかで素敵なドレス姿の女の人を見たら綺麗だなって思うし……公爵家の令嬢、ナターシャ(ぼくから見るとはとこに当たる)が時々僕にすごく近づいてくるんだけど、そういう時にどきっとしたりはした。
 だけど、それだけで終わって恋愛には発展しない。
 向こうにどういう意図があってそうやって近づいてきてるのかもわかってはいるんだけど……。

 そういうものに縛られずにもっともっと遊んでいたいんだ、ぼくは。
 遊んでるなんていったら父様に叱られるかな?
 とにかく昔から、通ってる学院の同じクラスの生徒達が恋愛ごとでもめたりするのを見るたびに「恋愛って面倒くさそうだな」って感情しか働かなかった。



 ムーンペタの町で、ぼくらの三人目の血筋、マリアが仲間として加入した。
 ……といっても本当ならサマルトリアかローレシアで保護して、ぼくとリークだけで旅を続ける予定だったんだけど。
 彼女は自慢の魔力を、ムーンペタの地下で囚われていた悪魔の子相手に見せ付けて「父の敵を取りたい」とぼくらに半ば無理やりついてきた。
 なんとなく、彼女は今までぼくが出会ってきた女の子と違う。
 凛としていて信念がある。
 そのせいで時々リークとケンカしているみたいだけど……。

 そんな彼女と旅をしていてある夜のこと。
 ぼくらは、風のマントを求めて風の塔に向かう途中で一晩過ごすこととなった。
 リークは見張りのために焚き火の前で番をしている。
 数時間後に交代で眠る手はずになっているので、ぼくらは一足先に眠ることにして木陰で毛布にくるまった。

 少しだけ離れた場所に、マリア。
 今日も疲れたしすぐ眠れそう……と思った時。
「ねえ、カイン。起きてる?」
 もうとっくに眠ったと思った彼女から声をかけられてぼくは驚いて目をパチクリとさせてしまった。
「……起きてたんだ。マリア」
「一度、貴方に聞いておきたいことがあって機会を伺っていたの……やっと聞けそう」

 なんだろう。機会を、ってことはリークには知られたくない内容なんだな、って即座に思った。
 ぼくは少しだけ黙ってから「うん、何」と返事した。
「……レイカーリス王子は私のことが嫌いなのかしら」
 そのセリフに思わずぼくはぽかんと口をあけてしまう。
「なんでまた急に」
「まず初めて会った時のこと、私が貴方達に付いていくといったら物凄く怒ったでしょう。あれは、一応わかるのだけれど……。それからずっと刺々しい気がして」

 刺々しい?
 ぼくはここまでの道のりを思い出して首を傾げる。
 ああそうか、……リークの無愛想なところを彼女は誤解してるのか。
 そう思い当たったけど、でもどうしてそんなことを聞いてくるのか気になったぼくは少しはぐらかしてみることにした。
「嫌われてるのはイヤかな」
「嫌というより……これから一緒に力を合わせて旅をしなくてはならないのに、色々と不都合でしょう……」

 それは確かにそうだ。
 さすがしっかりしてるな、とぼくは感心する。
 が、次に彼女が口にした言葉には、先ほどよりも更に口を開けざるを得なくなってしまった。
「でも、不都合がどうという以上に、……刺々しい対応をされるたびに悲しくて涙が出そうになるの……」
 そういいながらまたリークの態度を思い出したらしく、彼女は涙声になっていた。
 な、なんで?
 泣くほどのことかな、別にリークだっていじめてるわけじゃないだろうに!

 ぼくは慌てふためくとがばっと起き上がった。
「別に嫌ってはいないと思うよ! ああいうヤツなんだよ、君は気づいてないかも知れないけどぼくにだってああいう態度するんだよ知ってた!? それにリークのやつ、なんだかんだで君の事心配してるみたいだしさ、今日の見張り番だって君とは交代しないでぼくとリークと二人だけでやろうって相談してきて」
 ぼくのあまりの剣幕に彼女は唖然としてから……涙をぬぐって嬉しそうに笑う。
「……ありがとう、カイン」

 その笑顔にぼくは思わずどきりとしてしまった。
 何しろお城に居た女の子達より格段に美しい彼女に、そんな嬉しそうな笑顔を見せられたらときめかないほうが人としておかしいと思うんだたぶん。
 だけど。
 やっぱりぼくの心はそれ以上の気持ちをマリアに対して持つことはなかった。

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□モドル□


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