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 ──────────────────えーと。
 それはどういう意味に解釈すればよろしいでしょうか先生。
 ああ、とってもまずい、まずい予感がする。
 生真面目リークくんはどうやらぼくが連日からかったせいで本当に妙な方向に目覚めちゃったっぽい。
 ごめんなさいルビス様、ぼくのせいですロトの子孫をそんな方向に目覚めさせたぼくが悪かったんですごめんなさい謝りますからこの子なんとかしてあげて!

 などということにルビス様が答えてくれるはずがなく。
 ぼくは真剣に自分を見つめてくるリークにどぎまぎしながら視線を返した。
 いや、好きですよそりゃ。仲間として。そんなの当たり前じゃないか、馬鹿だなリークは。あはははは。
 ……って、言えばいいんだ。
 簡単なことだ。

 だけど……それを今言うと激しく空気が読めてない感じがする。
 いくら空気が読めない帝王のぼくでもそれは……。
「それに回答する前にひとつだけ聞きたいんだ、……恋愛の意味で聞いてるの? それとも仲間としての意味で?」
「仲間としてなら改めて聞く必要は無いだろう」 

 ぼくの問いに即答すると、リークは頭に両手を当てて思い切り振った。
「何故そんなことを尋ねているのか自分でもわからない、本来ならそんなもの気色が悪いと思うはずなのに、あれからずっとお前のいったことが頭を離れないんだ。それどころかカインならいいかも知れない、などと考えてしまって、……教えてくれカイン、僕はひょっとしてハーゴンの呪いにでもかかってるのか!」
 叫ぶように言うとリークはぼくに掴みかかってきた。

 き、聞きたいのはこっちの方だ!
 昨日の今日でなんでちょっとからかった程度で目覚める!?
 あ、あれだたぶん、きっとこいつの家庭環境がこう、……。

 そこまで考えて、ああ、とぼくは納得した。
 リークの家は確か母親がいなくて、しかも王弟が謀反を起こす気配があると聞いたっけ。
 圧倒的に……愛情が足りないんだ。
 心許せる相手も少なかったに違いない。
 それで、ぼくみたいなタイプと出会うのは初めてだとも言っていた。

 ぼくに心を許したそれと恋を、……勘違いしてるのかも知れない。
「あの、さ、リーク。そのこと考えるのはやめたほうがいいよ。しばらくしたら落ち着くよきっと」
 ぼくの回答に、リークは動きを止めてから項垂れた。
 それを恋と思ったのなら、今のぼくの言葉で彼は失恋したことになる。
 少なくともそれに近い感覚を味わったはずだ。

 だけどこれでいい、こうするのがお互いのために一番いいんだから。
 そう、口の中で呟いてからぼくはあれ?と思った。
 なんで。

 なんで、ぼくの方ががっかりしてるんだ?
 え、あれ?
 ぼくは慌てて自分の胸を掴んでみた。
 ちょっと待って、なんだこの感情。
 ま、まるで……。

「家で動物は飼えないのに捨てられてた子犬を拾ってしまって、捨ててきなさいって言われて仕方なく捨てにいったけどその子犬が自分を『捨てるの? 捨てるの?』って目で見つめてきて、すごく罪悪感を感じたときと同じ気持ち──────!!」
「……は?」
 ぼくの叫びにリークは怪訝そうな顔をした。
「あ、いや、その」
 じと、とぼくを睨んで来る。

 しかし、諦めたようにため息を漏らすと、もう一度ベッドに横になった。
「疲れた。お前の言うように考えないようにするよ。おやすみ」
 あっさりと引き下がる。
 まあこんなもんだろう。

 ぼくはようやっと落ち着きを取り戻すと自分のベッドに入ろうとした。
 ……けど。
 ああ、なんだか癪に障る。
 人のことあれだけ騒がせておいてすぽっと終了できるその頭が羨ましい。

 ちょっとだけイラッとしたぼくは、寝ているリークのそばに歩み寄った。
「リーク。さっきの質問答えてなくてごめん。……ぼく、君が好きだよ。マリアに対するのとは違う気持ちで、好き」
 そういってぼくは……彼のこめかみにそっとキスを落としてみた。
 だけどリークは動かない。
 ぼくはちぇ、と舌打ちするとベッドにもぐって眠ることにした。

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□モドル□


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