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……深夜。 トイレに行こうと思って起き上がると、明かりの消えた暗闇の部屋で誰かが向かいのベッドに座り込んでいる。 一人しかいない、リークだ。 「……リーク? 眠れないの?」 ぼくに声を掛けられると、リークがびくりと思い切り反応したのが月明かりで見えた。
「……だめなんだ。やっぱり呪いに掛けられてる……」 「呪い、って」 なんだかトイレに行きたくなくなったぼくはリークの隣に座った。 「やっぱり考えちゃう?」 「……お前があんなことするからだ」
大きくため息を漏らすリークに、ぼくはやれやれと肩を竦めた。 「さっきの起きてたんだ。……気持ち悪かっただろ? 男にああいうことされるの。ぼくはギャグで慣れてるからアレだけど」 「ギャグで、……慣れてる、ね」
リークは視線を落としたままだ。 「……だから呪いだっていうんだ。気色悪くなんかなかった、むしろ、嬉しかった……」 「……」
ぼくはかちんと固まった。 まるで氷の魔法でもかけられたみたいに。 今なんておっしゃったこの世間知らずの王子様は。 ぽくはぱくぱくと口を動かすとリークをまじまじと見た。
うーんと、確かに王子特有の品性、端整な顔立ちをしてるとぼくが称しただけはある、けど、……どう見ても女の子の顔つき、体つきからは程遠い。 ということはぼくはこいつ相手に上になることは出来ないなたぶん。 じゃあ向こうに乗られ……、ああああああああ、それは嫌ですごめんなさい!! どっちかっていうと例えリークが相手でもぼくが上の方がナンボかマシです!!
っていやいやいやいやそうじゃなくて、さっきのキスで、しかもこめかみにした程度でもう完全に自覚したっていうのかい! 君の想ってるそれはただの勘違いで、実際に行為に及ばれたら嫌でしょう? という意味合いを込めての行為だったのに、どんどんドツボにはまって逆効果になっていく。 「リーク、あの……」 ぼくが気まずそうにいうとリークは小さく笑って、いった。 「……ごめん。お前が冗談でああしたのは理解した。本当に頑張って、もう二度と考えないようにする」
そうしてまたベッドに戻るとリークは今度こそ、眠り始めたようだった。 「……、謝るのはぼくの方だ。ごめん……」 明日から気まずくなったらどうしよう。 そればかりがぼくの頭の中をぐるぐるとしていた。
END
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