そこまで言われては反論できない。 俯くと、カインは立ち上がって宥めるように僕の頭を撫でてきた。 「ま、話は大体わかったよ。それじゃマリア救出作戦を練ろうか」 「……ああ」 所在無い僕の返事にカインは笑う。 「はいはい、ヘコまないヘコまない。……でさ、たぶんマリアは自分の部屋かそれとも王子の部屋に居ると思うんだけど……どっちだと思う?」
問われて考え込む。 彼の性格なら、間違いなく王子の部屋だ。 「王子の方だな。彼がああ揉めた後にマリアの部屋にマリアと二人きりで篭るのも妙な話だ」 「ん、ぼくも同感。……しかも、部屋の出入り口は近衛兵で固めて、ね」 ふむ、と腕組みして再び考え込む。 力づくで正面突破しても構わないが、無用な血はできれば流したくない。
「なら、どうする?」 「王子の部屋はどこ?」
カインの切り返しに唐突なものを感じながらも、「……東の尖塔の最上階」と返すとカインは頷いた。 「結構高い塔だけど……君の力なら、窓の下から小石を投げたら窓に届くんじゃないかな。それでぼくらが窓の下に居る事をマリアに知らせられれば」 「……ちょっと待て」
カインの考えをなんとなく汲み取った僕は、恐る恐る、尋ねてみた。 「……あいつを窓から飛び降りさせるつもりか」 僕の回答に満足げな笑みを浮かべ、カインは僕らの部屋の窓の外を指す。 「君ならマリアを受け止められる」 「それは、でも、……」 「自信ない?」
冷やかすような口調のカインに、僕は大きくため息を洩らした。 「……わかった。やろう」 「そうこなくっちゃ!」 笑顔で僕の肩を叩くカイン。
マリアを受け止められなかったら、大変なことになる。 そんなことはカインも承知のはずだ、だが……僕が絶対マリアを落とすはずがない、と何か確信めいたものを持っているようだった。
「よし、すぐ行こう。アゼル王子に気取られたらまずい」 「そうだな……。……彼の部屋にマリアが居てくれるといいんだが」
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