とりあえずそれは気にしないことにして話を続ける。
「どちらにしろ……同じだ。マリアはあの男を受け入れるつもりはないんだろう?」
 すると、マリアは僕の手を握ったままこくり、と小さく頷いて顔を上げる。
「わかりました。貴方が大丈夫だと判断したのなら、明日出ましょう。……アゼル王子には告げるの?」
「いや、言わないほうがいいだろう。僕達はともかくお前のことを必死で引き止めそうだ」

 それを聞くとマリアは小さく笑った。
「そうね。……もしこのことが知れてしまって、引き止められたりしたら、どうしましょうか」
 いたずらっぽい笑みを浮かべているマリアに僕も釣られて笑ってしまった。
「その時は王子を張り倒してお前を連れて逃げる、というのでどうだろう」
「仮にも曾お婆様の祖国の王子……実質のラダトーム国王を殴ってしまったら、ローレシアとラダトームの関係は大変なことになるかも」
マリアが冗談めかしてそういうが実際問題、本当に実行したらその通りになる。
 国交断絶もありうるのだ、……ローラ姫の子孫の国とローラ姫の出身の国とで。
 ……だとしても、どうでも良かった。
「その時はその時」

 ふう、と息を漏らしてそろそろ部屋に戻してやろうかと、ふと手元に視線をうつす。
 まだ、手は握られたままだ。
「明日の朝一番に出よう。……いや、日が昇る前のほうがいいな。今日はそろそろ寝ようか」
「……、……」

 マリアは一瞬頷きかけたが、そのまま無言になってしまった。
 そして手も離さない。
「……マリア?」

 どうしたのだろうと顔を覗き込んでみると、眉尻を下げて瞳を歪めている。
「……どうした」
「リーク、……今夜は一緒に居て」

 マリアの大胆な言葉に僕は目を白黒させてしまった。
 僕の様子を気にしながらもマリアは続ける。
「理由は聞かないで……お願い」
 とまどいながらも、彼女がそう懇願するので聞かないことにする。
 ……あんなことがあった後だから仕方が無い。
 気丈なマリアのことだ、しばらくついていてやれば落ち着くだろう。

 そう考えてぼくはマリアに促されるまま足を進めた。
 マリアはそのままベッドへと手を引いて行き、ベッドに腰を下ろす。
 そうして僕に座らないのかと訴えんばかりに見つめてくる。
 ……どうしようか。
 少し、考えた。

 仲間とはいえ年頃の女性と、ベッドに隣座していいのだろうか……。
 僕のややうろたえた様子を見てマリアは小さく笑いを漏らした。
 迷っていたが、ひとまず僕から何か行動を起こさなければ何も起こらないだろうと判断して、隣に座る。

「居てくれるだけでいいの……。ごめんなさい、でも……ありがとう。こうしていてくれるだけ落ち着く……」
 マリアは僕に身を寄せるともたれ掛かってきた。

 どうにもこういう時の対応は慣れていない。
 どうしたらいいか考えてから、マリアの肩をそっと抱いてみる。
 肩に触れるとマリアはわずかに身じろぎしたがすぐに大人しくなった。

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□モドル□


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