苦手な相手、憎い相手、嫌いな相手……。
 そういった相手は正直なところ、たくさん居る。
 人付き合いが苦手な証拠ということで情けなくもあるのだが、性に合わないのだからどうしようもない。

 とりわけ憎い相手と言えば母を失くすきっかけとなったドーヴィル。
 本当にこいつは僕の顔を見るたび嫌味を言ってくる、……憎いというより面倒くさい相手、に進化していたけれど。
 そうしてやはり、ハーゴン。
 マリアの故郷を滅ぼした憎むべき相手。

 だが、こいつを直に見たことのない僕は「マリアの仇」という以上の感情がどうしても湧かない。
 もっとはっきり憎まなければならないのはわかっているのだが。

 それから、ラダトームの王子アズムール・ラルス。
 そもそもこいつからいきなり僕を敵視してきたのだが、その敵視される理由が今一つわからなかった。
 だがそれは恐らく嫉妬によるものだろうと判断する。
 世界の覇権をラダトームから奪った、ローレシア王国に対する嫉妬。
 そして、アズムールが愛しているマリアと常に行動している僕への嫉妬だろうと。
 だから僕は敵意を向けてくる彼が苦手だ。

 さて、それらを差し置いて、とにかく嫌いな相手が一人だけ、いる。
 僕の曾爺さん……ロトの勇者と言われた男、アレフの宿敵。
 ……その、曾孫。

 そう、かつてアレフガルドを脅かした宿敵、竜王の曾孫に当たる男だ。
 彼は元々は竜神族……神の一族の一員であり、神々は人間のように無理に婚姻関係を結ばなくても子孫を残せるらしい。
 だから竜王ははじめは僕らの曾婆さん、ローラ王妃と結婚するつもりではいたけれど、やむなく相手無しで子孫を残すことにした、それがその曾孫だ。

 神々が子孫を残すという概念は僕達人間とは少し違う。
 神の言うところの子孫とは、すなわち自分の分身を遺すということになる。
 そこから兄弟姉妹が生まれて分家していっても「分身」の意味では一族の誰か一人にしか、その能力は継がれない。

 と、言うのが先日竜王の曾孫に出会った時に彼から聞いた話だ。
 つまり彼は竜王の曾孫でありながら分身ともいえる存在で、初代の竜王の記憶や能力を完全に受け継いでいるという。
 まあ記憶、というからには時が経てば薄れていく部分もあるらしいが。

 その竜王の曾孫に、僕の中の曾爺さんアレフの血が反応しているのかなんなのか。
 どうにも僕は、あの男が嫌いだった。
 逆に言えばそれがアレフの血が反応することによるものなら、僕にはロトの血が流れているということなのだから嬉しいことなのかも知れない。

 それを喜ぶのと、奴に対しての感情はまた別だ。
 カインは、はじめは警戒していたが彼が僕らに危害を及ぼさないと知って警戒を解いたらしい。 
 そしてマリアは。
 わからない、謎なんだが奴となぜか仲がいい。

 それらの事実が僕の不愉快に一層拍車を掛けていた。

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□モドル□


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